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「仕事が出来る人ほど残業する」の真実

日本から長時間労働をなくしたいと考えている私にとって「なんだと?!」と気になるタイトルの記事をみつけました。

 

blog.tinect.jp

 

「仕事が出来る人ほど残業する会社」の経営者の考え方

この会社の経営者が「残業時間と能力の相関性」に対する考え方は大きく分けて2通りあると言っており、それは以下のようなものです。

 

①「残業時間が多い人は、無能だ」とする会社。これは効率を重んじ、残業代を抑制し、「仕事が遅い人」ほど残業代が多くもらえるという不公平を解消する、という目的でやっている会社が多い。
「残業時間が多い人は、熱心に仕事をする人だ」とする会社。これは、「長時間労働も厭わず働く」という姿勢自体を評価し、「残業代」を最初から織り込んで給与を決定している会社に多い。」

 

 そしてそれぞれにはメリットとデメリットがあり、以下のように述べています。

 

①の考え方

〇メリット

  • 生産性が高くなりやすい。
  • 時間が決まっていると集中力が高まる。

〇デメリット

  • 残業が必要な時に誰もしたがらなくなる。

 

②の考え方

〇メリット

  • ピーク時に残業してくれる。
  • 「長時間でも働きたい」と言う人の意欲を削がずに済む。

〇デメリット

  • 人件費が高くつく。
  • ダラダラ仕事してしまう人が増えてしまう。

 

 

 「残業時間が多い人→熱心」ではない考え方

上で示したような「残業と能力の相関性」を考慮し、この会社では「仕事のできる人ほど残業する」と言う考え方をとったそうです。

「仕事が出来る人ほど残業する」と言われると、では「残業が多い人は熱心だ」と評価するのかと思いきや、そうではありません。「残業は生産性の高い人にしかやらせない」という方策をとったと言うことでした。つまり「仕事が出来る人に残業を依頼する」と言うことですね。

具体的な方策は以下の通りです。

  • 残業を許可制にする。
  • 会社が「生産性が高い」と評価した社員にのみ残業を任せる。
  • 残業代は法律で定められている金額から、さらに1.5倍にして払っている。

つまり、この会社にとって「残業できる」が特権になっていると言う。

上記の方策に対して、この記事の筆者は「変わったやり方ですね」と返したそうですが、私にしてみれば「当たり前と言えば当たり前では?」と思います。

 

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気になる点について

面白いとは思いましたが、私にはいくつか気になる点がありました。

 

残業が許可制なのは当たり前

この記事を読んで「やっぱりそうなのか」と思ったのが、「残業を許可制にした」と言う部分です。つまりこの会社は、上記の方策をとる前は「社員は自分の判断で自由に残業していた」と言うことになります。

私が所属する会社でもそうですし、ネット等で色々な記事を読んでも、日本の企業の多くは「社員が自己判断で勝手に残業する」のが当たり前になっている印象を受けます。

まず、そこが間違っているのではないか?と思います。

労働時間は1日8時間までと法律で定められており、残業は「36協定」で規定した時間しかさせられません。しかも残業時間は割増賃金となり、会社は月給を時間に換算した金額の1.25倍を支払わなければなりません。もし私が経営者なら「勝手に残業されちゃ困る」と考えます。

本来、残業とは会社や管理職が社員に命令して実行させるものであり、社員が自己判断で行うものではありません。そりゃ管理職にとっては、部下が「仕事が終わらないから」と進んで残業してくれれば、管理する手間が省けて楽でしょう。でもそこに甘えてしまったがために、今のような「社員が自己判断で残業するのが当たり前」の会社が増えてしまったと考えられます。

多くの会社員は「仕事が多いから仕方ない」と自ら残業しているのでしょう。そしてそのうち「残業代が当たり前」になり、「残業代を前提とした生活水準」になります。そして会社側も「社員が残業するのは当たり前」になり、「残業代を前提とした給与設定」になっていきます。

これが悪循環になった結果が、今の日本社会ではないでしょうか?

 

「長時間でも働きたい」と言う人の意欲はどうなったのか

この経営者が「残業と能力の相関性」 に関する考えを話した時の、「長時間でも働きたい人の意欲を削がずに済む」と言う話はどうなったのでしょう?

と言うのも、残念ながら「長時間働きたい人=生産性が高い」とは限りません。残業を許可制(当然ですが)にしたことで、「長時間働きたいけど残業を許可されない」という人がいると思います。その様な人たちは、やる気をなくして定時内の生産性がさらに低くなってしまっている可能性が考えられます。

私の会社でもそうですが「やる気はあるけど生産性が低い」社員は一定数いて、その様な人たちに活躍してもらうためのマネジメントが大切だと考えています。

ですので、この記事でそれに関する記述が無かったのは、少し残念なところです。

 

まとめ

もともと残業とは、必要な時に企業側が社員に命令することで実施されるものです。それがいつしか、社員が自己判断で残業するのが当たり前になったことで、今の「長時間労働当たり前」の日本社会になってしまっていると感じます。今回紹介した経営者の方策が「変わっている」と思われない社会の方が、本来の姿なのです。

また「仕事が出来る人、出来ない人」と言うくくり方をしていますが、私は「仕事がで出来る」とは、テクニックの1つだと思っています。もちろん、人間には先天的な能力の差はあるかも知れませんが、一般的な企業で実施されるような仕事のほとんどは「テクニック」をマスターすればできるものだと思います。また本来、仕事とは「教われば誰にでもできる」ものになっていなければ成り立たないと思います。それがマネジメントなのです。

つまり日本の会社の、特にホワイトカラーの仕事に関しては、何故か社員1人1人の「やり方」が放置されていて、それが「仕事が出来る・出来ない」を生んでいるように感じます。

上述の「長時間働きたいけど生産性が低い」と言った人たちに活躍してもらうためにも、会社は「仕事が出来る人」の仕事のやり方をモデリングして他の社員を教育することで、会社全体の生産性が上がるように計らう必要があると思います。

 

 

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