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「部下を次々辞めさせたパワハラ女帝の末路」は、日本人の事なかれ主義の犠牲者かも知れない

パワハラについて気になる記事を読みましたので紹介します。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

〇目次

 

自分を追い詰めて頑張る人ほどパワハラ加害者になりやすい?

この記事に登場する「パワハラ女帝」とは、とある女性向け商品企画会社の企画部チーフデザイナーであったAさんのことです。

この会社の企画部は、通常は専門学校や美大卒の契約社員をメインとして構成されていたとのことです。そこに配属されたAさんは経済学部卒の総合職でした。そういう意味でも彼女は異色の人員でした。

その様な境遇の中、Aさんは自費で夜間専門学校に通って必要な知識を身につけ、やがて企画部で頭角を現します。これまでの通例を打ち破り、新たな手法を確立します。これによって実質的に企画部に「君臨」するようになったAさんは、暴走し始めます。

Aさんの暴走に対し、上司の部長は「見て見ぬふり」をしました。そのためか、Aさんの考えと合わないBさんが退職してしまうだけでなく、Aさんの厳しい指導によって退職する部下が続出します。

いつしかAさんは社内で孤立するようになり、会社の業績悪化による企画部の閉鎖をきっかけとして、退職してしまいます。

この記事では、以下のように締めくくられています。

 

Aさんは自分の仕事に一生懸命でした。しかし、自分を追いつめてがんばる人ほど、他人にもそのがんばりを無意識に要求しがちです。その要求は「ハラスメント」となることもあります。
自分だけががんばっているのではありません。働く人として他人の人格や考え方を尊重する気持ちを持つことが大切です。

原文まま

 

この終わり方では、まるでAさん1人に責任があったかのような言い方ですが、私はそうは思いません。Aさんはある意味、被害者とも言えると思います。確かに「自己を犠牲にして仕事に打ち込む人」は他人にも無理を強いる傾向にはあると感じます。そこはAさんの改善点であったでしょうが、では何故、途中段階で誰かが指導しなかったのでしょうか?

私はAさんの暴走を早い段階で止めずに「見て見ぬふり」をした上司に最大の責任があると思っています。この背後には日本の「事なかれ主義文化」「男性社会」の問題があると考えられます。

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本気で指導しない日本型組織の問題点

もちろん、私も全ての日本の会社組織を知る訳ではありませんが、少なくとも、この記事で紹介された会社は私が所属する会社と同様の「ニオイ」を感じます。

この記事の始めの方で、実はAさんについてこんな記述があります。

 

実は、Aさんの入社当時は女性営業職がおらず、総合職として採用したものの、扱いに困って一時的に企画部に配属したのが本音でした。Aさんは非常にプライドが高く、顧客に頭を下げることができない性格で、営業部から放り出された人材だったからです。

原文まま

 

企画部で頭角を現したAさんに対し、会社の上層部が驚いたらしいのです。その驚きの理由は、要は「営業部から放り出した人材」だったからです。

プライドが高くて顧客に頭を下げられないAさんを「使えないヤツ」と烙印を押したのでしょう。その部署で問題がある人員を他部署に異動させ、その部署でも問題であれば、また移動させ、「いつか辞めるだろう」とでも思ったのでしょうか?

そのような「手口」は私が所属する会社もやりますが、この場合は往々にして、その問題社員に対して「本気で指導した上司」はいませんでした。

私の偏見かも知れませんが、日本人って「黙って言うことを聞く人間」を重宝し、そうではない人間は無視する傾向にありませんか?だからこそ、逆に「金八先生」のようなドラマが人気が出るのかも知れません。

特に「会社」の場合はその傾向が顕著なように感じます。

 

上述のように、企画部へ配属されたAさんは自費で夜間学校に通ってまで、専門知識を身に付けます。この記事の最後で、Aさんを「自分を追い詰めてがんばる人」と評していますが、私は逆にAさんは「追い詰められていた」のではないかと感じます。

営業部でもAさんが入社当時に女性社員がいなかったと言うことですし、男社会の中で独特のプレッシャーと闘っていたのかも知れません。それが彼女の「顧客に頭を下げられないプライドの高さ」を助長していた可能性もあると感じます。

果たして、彼女の心理について親身に寄り添った上司がいたのでしょうか?「放り出した」と言う表現からも、そんな上司はいなかったのではないかと思えて仕方がありません。

Aさんはおそらく、自分が営業部から放り出されたことは自覚していて、企画部での生き残りに賭けていたのでしょう。追い詰められていたからこその、「自費で夜間学校なのではないでしょうか?

 

上司の見て見ぬふりは人材を潰す

そうやって生き残りを賭けて頑張ったAさんにとって、周囲の「のんびり」が目に余るのは当然でしょう。ある意味、追い詰められて頑張ったAさんは「手負いの野生動物」の様だったかも知れません。自分の身を守るために、必死に虚勢を張る余り、周囲に威圧的になった可能性が考えられます。

そして、その様なAさんを「見て見ぬふり」をしたのが、当時の上司である部長さんです。Aさんが成果をあげていたからと言うのも理由でしょうが、基本的には「事なかれ主義」が働いたと感じます。

このときに、部長がAさんを適切に指導していれば、その後のAさんの影響による退職者や、Aさん自身の退職を防げた可能性が高いと感じます。

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「たらい回し」の日本企業文化は良くない

かねがね、「厄介な社員は部署をたらい回しにして自ら辞めるのを待つ」と言う話は聞いたことがあります。そして私が所属する会社でも実際にありました。

全社的にも「怠け者」で有名なCさんは、そりゃもう、会社中を転々と転勤し続けました。でも辞めなかった。ある意味、根性があります。

でも、とある部署にいた時に、Cさんから労働組合にSOSが来ます。

なんと上司から高圧的に「辞表を出せ!」と迫られたと言うのです。

当時、労働組合の「長」をやっていた私から、会社に対して事実関係の確認をさせたところ、Cさんの証言は事実でした。組合からは会社に厳重に注意し、特に私からは会社のこれまでのCさんへの処遇に対する問題点を、以下のように指摘しました。

 

Cさんのことは全社的にも有名で、その上司(高圧的な態度をとった)の気持ちは分からなくもない。

しかし、これまで会社は彼を単なる「厄介者」としてたらい回しにするだけで、誰かが本気になって指導したことはあるのか?

会社が求める「社員像」を彼に対して親身に説明し、根気強く指導していく事が必要なのではないか?

それによって彼の勤務態度に改善が見られれば会社としてもプラスになるし、もし改善が見られない場合は、会社として正当な手続きをして解雇すれば良いのではないか?

若き日のジオジオ発言より

 

当時の会社上層部は、私のこの意見に対し、真摯に考えて下さったようです。

その後、上司とCさんで親身なやり取りがあったようです。

数年後、Cさんは結局退職することになってしまいましたが、その時は、以前のように組合に泣きつくことはありませんでした。話し合いの末、会社・本人の双方が納得した結果のようです(※直接聞いていないので、真偽は不明ですが・・・)。

 

まとめ

以上の「Aさん」については、あくまで私の想像に過ぎません。

しかし私の会社の実例にもあるように、日本には「事なかれ主義」で、問題社員に対して本気で向き合って指導することもなく「たらい回し」で自ら辞めることを期待する悪しき風習があるように感じます。

パワハラ女帝」は、もしかしたらその様な日本の悪しき風習の犠牲者だったとも考えられます。そしてAさんの出発点である営業部も、「男性社会」が故にAさんを「厄介者」に変貌させてしまった可能性もあります。

少子高齢化が進み女性登用が叫ばれている昨今、この様な日本の悪しき伝統がまだ実在しているのであれば、その改善が何よりも急務だと言えるのではないでしょうか?

 

 

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