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【愚策】プレミアムフライデーに見る日本の上層部の壮大な勘違い

今、政府や経済界によって「プレミアムフライデー」なるものが検討されているようです。

headlines.yahoo.co.jp

 

 

「プレミアムフライデー」の内容と批判記事

政府や経済界が検討中の構想で、月末の金曜日の午後3時に退庁・退社し、「夕方を買い物や旅行などに充てる」と言うもの。あくまで個人消費喚起」が狙いとのことです。非常に浅はかで、腹立たしい構想です。

と思っていたら、以下のような記事もありました。

最初はハフィントンポストで読んだのですが、はてなブログのはっしーさんの転載記事だったんですね。

 

www.huffingtonpost.jp

nzmoyasystem.hatenablog.com

読みながらウンウン頷きまくりでした。全面的に賛成です。

ですので以下では、はっしーさんの記事と被る部分もあるかも知れませんが、私独自の視点もまじえてお話ししていきたいと思います。

 

その効果は?実際にどのように運用するのか?

上記のはっしー氏の記事に書いてある通り、この「プレミアムフライデー」はあくまで消費喚起が狙いであるため、成功しなければ即、お蔵入りするでしょう。「ガス抜き」と言う意味合いも適切です。

想像してみましょう。もし「プレミアムフライデー」が実現したとして、あなたは15時に退社して買い物や旅行にでかけますか?

そりゃ、一部はいるかも知れません。でも「関係ない」と言う人も多いと思うのですが、いかがですか?

①強制力は?

まず、どの程度の強制力を持たせるのか?が疑問です。あくまで「ノー残業デー」のように、キャンペーン的に呼びかけるだけなのでしょうか?国は官公庁に、経団連は各企業にと言った風に。

ヤフーの記事では

プレミアムフライデーは、早い時間での退庁・退社に合わせて夕方に流通業界や旅行業界、外食産業などが連動してイベントを開催するという内容。

原文まま

とありますので、あくまで「キャンペーン」なのでしょう。

②給料はどうするのか?

会社側も労働者側も気になるところでしょう。1ヶ月で2時間なので数千円レベルとは言え、どうするのでしょうかね?特に労働者側からすれば、買い物して出費した上に、給料から5000円天引きされてたらイヤですよね。 

③商売する側の労働者のメリットは?

あくまで「消費喚起」が狙いなので労働者のメリットは薄いと思うのですが、あえて「2時間早く帰れる」をメリットだとしましょう。でも一方で、上記の「流通業界、旅行業界、外食産業」で働く人々はプレミアムフライデーだからと言って早く帰れる訳ではありません。 売り上げが伸びれば特別ボーナスでも支給してくれれば良いのですがね。 

④滞った仕事の処理はどうするのか?

これが一番の問題ではないでしょうか?定時より2時間早いだけとはいえ、例えば金曜日に毎週3時間残業するほどの仕事があるとしましょう。そうすると実質5時間分の仕事が滞ることになります。 その分の穴埋めはどうするのでしょうか?

結局、次の日の土曜日に休日出勤するのでは、意味がありません。 

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日本の上層部はブラック労働の本質を見誤っている 

非常に疑問に思うのですが、政財界はなぜ月に1度の金曜日に15時に仕事を終わらせるだけで「経済が活性化する」と思えるのでしょうか?

私がブラック労働を強いられていた時は、休日は疲れきっていて、家で寝て終わることが普通でした。それでも疲労は抜けきらずに慢性的に疲労が蓄積していたので、ちょっと余暇が出来たからと言って、買い物に行こうかと言う気力はありませんでした。

今回の「プレミアムフライデー」にしても、ブラック労働で疲れ切っている人であれば、積極的に消費行動をするとは思えません

「早く帰れる日をつくってやれば、みんな早く帰って金を使うだろう 」と言う安易な発想は、「ノー残業デー」と似ています

私が所属する会社でノー残業デーが導入された時、正直、怒りの感情しか湧きませんでした。残業が発生する根本原因を理解していないのだろうと思ったからです。

「ノー残業デー」がもし効果を発揮するのであれば、それは「本来は不要なはずの残業」をしている時のみです。「プレミアムフライデー」もこれと同様で、「本来は不要なはずの仕事が原因で早く帰れない」のであれば非常に有効でしょう。

では「本来は不要なはずの仕事」とはどういうシチュエーションで発生するかと言うと、概ねこんなところだろうと思います。

①上司が「仕事は遅くまでやるもの」と考えており、帰りづらい雰囲気になっている。

②社員1人1人の個人的都合で「自ら進んで」残業している。

上記のいずれかが理由であれば、 強制力の強い「ノー残業デー」であれば、残業削減になると思います。しかし強制力が弱いと、上記①の場合は残業はなくなりません。上司が「ノー残業デーなんて関係ない」と言い出すからです。

一方、以下のような場合は、「ノー残業デー」でも効果はありません。

①日々の仕事が多すぎて、残業が常態化している。

②上司が上手に仕事を配分できないため、残業が慢性化している。

ノー残業デーの日には早く帰ったとしても、休日出勤するとか、悪質な場合は「帰ったことにして、残業をさせる」上司も出てきます。

断言しましょう。「プレミアムフライデー」も、全く同様のパターンになります!

 

しかし、これでハッキリしました。日本の上層部は長時間労働「労働者個人の問題」だと考えているのです。 だから「ノー残業デー」だとか、「プレミアムフライデー」のような、本質とは関係のないピント外れの施策が生み出されるのでしょう。

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別のブラックが生まれないか?が不安

プレミアムフライデーによって、「月1だけど金曜日に早く帰ることができる」と言う労働者がいる一方で、 この時を「稼ぎ時」とする業界の労働者には関係ありません。

もしかするとプレミアムフライデーのイベント企画のために「余計な労働時間が増える」危険性が高いと思います。

また外食産業、特に居酒屋などの飲食店は、通常より開店時間を前倒しして営業することになると思います。そうなれば、学生アルバイトが授業があるのに無理やりシフトを入れられてしまうなど、新たなブラック問題も生まれそうです。

 

まとめ

あくまで「消費喚起」が狙いの政策ですが、効果があるとは思えません。この愚策により、日本の上層部は長時間労働問題を「労働者個人の問題」だと勘違いしている可能性があり、その本質を理解していないと考えられます。

長時間労働、すなわちブラック労働を改善するためには、日本の経済構造から日本人全体の考え方まで、広い視野で考えなければならないと思います。

まずは労働環境を改善することが第一です。

日本人は報われない長時間労働で疲弊しています。まずはそれを解消しない限りは、いくら「仮初の余暇」をつくろうとも、景気が活性化することはありません。そして長時間労働問題を根本から解決することで、日本の労働生産性は向上するのです。

 

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geogeokun.hatenablog.com

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