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トラック運送業界のブラック労働を改善しよう!【前編】 トラック運転手不足報道に見るブラックなメンタリティー

社会・労働問題 世の中

トラック運送業界に対しては以前から気になっていた中、こんな記事を読みました。

トラック運転手不足深刻 物流システム瀬戸際 : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

「安くて早くて便利」の陰にトラックドライバー達の苦悩が見えてきます。トラック運送業界の現状と今後について、考察を進めていきたいと思います。

思ったよりも長くなりましたので、2部に分けてお伝えしたいと思います。

ちなみに、この記事は数日前から書いていたのですが、ちょうど完成させた8/17の夜に、運送会社役員の書類送検のニュースを見ました。これについては最後に「追記」として書き加えております。

 

物流を支えるトラック運送業界の低価格競争

トラック運送業界は過当競争により経営が厳しい上に、深刻な人手不足に陥っていると言う。しかしネット通販の拡大で需要が増え、しかも多様で細やかなサービスが求められるようになっているようです。

過当競争によって何が起こるかと言えば、まずは「低価格競争」です。同業各社は限られたパイを奪い合うために価格を下げ、激しく争います。

しかも運送業の場合は製造業等と異なり、商品の差別化が難しいと考えられます。私はトラック業界については素人ですが、差別化について色々と考えてみても「速さ・安さ」くらいしか思いつきません。あとはブランドイメージくらいでしょうが、そんなの使えるのは、クロネコヤマトとか佐川急便とか、一部の企業だけでしょう。

すなわち「味・見た目・機能性」と言ったような「他社と差別化できる要素」が少なく、価格以外に勝負するものが少ないのではないでしょうか?もちろん「速さ」もありますが、法定速度がある以上、他社と横並びになるため差はつきません。

 

「ほとんどの若者はトラックに乗りたがらない。人手不足は、この先ずっと続くよ」

トラック運送業界は1990年の規制緩和で新規参入が進み、事業者が急増した。過当競争のあおりで運転手の平均年収は減り、大型トラックの場合、ピーク時(97年)の510万円に対し、2015年は437万円。全産業の平均より50万~60万円も低い状況が続いている。    原文まま

 

低価格競争が進めば、当然企業の収益は落ち、利益率は下がります。他の業界であれば、原材料の買い取り価格の値下げ交渉や、設備投資の見直し等により凌ぐ方法も考えられるでしょう。

しかしトラック業界 の場合、原材料と言えるような「燃料代」は交渉できるようなものではないですし、設備と言えばトラックくらい。そうなると、必然的に「人件費を下げる」と言う対応をとることになります。このメカニズムは「建設業界および建設コンサルタント業界」に似たものを感じます。

利益確保のために人件費を下げれば、離職する人が出てきます。また若者にとっても魅力に乏しい職業になってしまい、新たに入社する人間もいなくなります。

 

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過当競争と人手不足が「労働環境の悪化」を産む

賃金が安くなり人手不足になれば、当然、労働環境は悪化します。このあたりも建設業界あるいは建設コンサルタント業界と同じ図式です。

 

午後6時頃に出発し、高速道路を飛ばす。少しでも距離を稼ごうと、山 口県に入るまで十分な休憩は取らない。午前2時を過ぎると眠気がピークに達し、力いっぱい顔を平手打ちしても効かない。「目を開けたまま意識が飛んだこと もある。その間にどれぐらい走ったのか、わからなかった」

心配なのは安全面だ。今年3月には広島県の山陽自動車道で、居眠り運転のトラックが多重衝突事故を起こし、2人が死亡した。

原文まま

 

上の引用文からは、ドライバーが疲労をおして運転を続ける様子が伺えます。このような労働を続けていれば、例え事故を起こさずとも、いずれ心身に異常をきたす可能性は高くなると思います。それなのに、記事ではあっさりと「心配なのは安全面だ」として死亡事故を紹介しています。トラック事故は、確かにドライバーの労働環境の悪化がもたらす最悪の結果です。しかし、その背後には多数のドライバーの健康被害があることに言及しなければなりません。

 

1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する

ハインリッヒの法則より

 

まさに1件のトラック事故の背後には、過重労働に苦しむドライバーが無数にいることを考慮しなければなりません。そこに考察が行き届かない記事の筆者に対し、憤りを感じてしまいます。

 

我々消費者にも責任はあるのでは?

最近は本当に便利な世の中になりました。インターネットを見て欲しい商品を注文すれば、数日以内には手元に届きます。また知り合いに贈り物を届けようと思えば、注文した次の日には先方に届きます。

運送料も安い。

 

厚生労働省は過剰労働を防ぐため、▽1日の拘束時間は原則13時間以 内▽4時間運転すれば30分以上の休憩を取る――などの基準を定めている。だが、国交省の昨年の調査では、500キロを超える運行の79・6%で拘束が 13時間を超え、4時間以上運転し続けるケースも32・7%あった。

男性に基準を守っているかと聞くと、こう返された。「基準を守っていたら、荷主が求めている時間に間に合わないよ」

原文まま

 

我々消費者は、その「便利で安い」の背後に「薄給で過重労働に苦しむトラックドライバー」がいることを忘れてはならないのです。

過当競争により給料が安くなり、人手が足りなくなったために過重労働を強いられているドライバーがいるのに、安い運送代のままで良いのでしょうか?注文すれば即届くと言う便利を安易に求めても良いのでしょうか?もう1度、みんなで考えるべきだと思います。 

過剰なスピードを求めれば無理を産み、それは何がしかのかたちで、いずれ自分に返ってくるでしょう。ドライバーが安心して基準を守れる世の中にしなくてはなりません。

仮にドライバーが基準を守ったがために希望日時に間に合わなくとも、我々消費者が命を落とすことはありません。しかしドライバーは「早くて便利」を求める私たちのために基準を守れず休憩をとれずに過労がたたって事故を起こせば、命を落とす可能性があるのです。

 

前編まとめ

後編でも指摘したいと思っていますが、この記事では「人手不足で困る業界」「日本の物流は維持できるか」と言ったような、経営者目線が主体になっているのが気になります。

無理をおして物を運ぶドライバーの健康面には触れず「安全面が心配だ」と事故の危険だけを取り上げたりなど、労働者目線が足りません

本来であればトラックドライバーの労働環境や健康被害についてフォーカスしてもおかしくないと思います。こう言った報道からも「人手不足だから無理して当然」と言ったような、日本人のブラックなメンタリティーが透けて見えるようです。

以上、後編に続きます。

 

追記

この記事を書き上げた8/17の夜に、上記の多重衝突事故を起こしたトラックの運送会社役員が道路交通法違反の疑いで送検されたと言うニュースを見ました。

headlines.yahoo.co.jp

事故当時のトラック運転手は2か月間で3日しか休んでおらず、時間外労働が常態化していた可能性があるとのことです。会社役員(運行管理者)は「過労運転」を命じた疑いがあるとして、書類送検されています。

この事故は「ドライバー1人の責任で起こした」訳では決してありません。たまたま今まで事故が起こらなかっただけで、他のドライバーも過重労働が常態化していた可能性があります。

社員に苦痛を与えるだけではなく、第三者の命をも奪うようなブラック労働とそれを命じるブラック企業は決して許してはなりません。

 

 

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