SHIINBLOG

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

大隅良典氏がノーベル医学・生理学賞を受賞! 基礎研究は確かに大切です!

東京工業大学・栄誉教授の大隅良典氏がノーベル医学・生理学賞を受賞致しました。本当におめでとうございます。「オートファジー」について、私は今回の報道で初めて知りましたが、この研究結果により、パーキンソン病などの神経の病気の予防法や治療法の開発につながるのではないかと期待されています。

 

ノーベル医学・生理学賞 大隅良典さん|NHK NEWS WEB

 

 

この記事を読んで私が最も感銘を受けたのが、大隅氏の以下の言葉です。

 

強調したいのは、この研究を始めたときに必ず『がん』の研究につながるとか、『寿命』の研究につながると確信して始めたわけではありません。そういうふうに、基礎研究が転換していくんだということを強調しておきたいです」と述べ、自然科学の分野での基礎研究の重要性を強調しました。

原文まま

 

現代社会では、どうしても科学(サイエンス)が技術(テクノロジー)として社会に直接的に役立つことが求められています。産官学連携が進み、大学も率先してベンチャー企業を立ち上げる事例も珍しくなくなりました。

またとある大学の教員募集の要件に「民間企業で実務経験があり、技術士を有するもの」とあるのを目にしたことがあります。技術士とは科学技術を取り扱う技術者の国家資格の最高峰の資格*1です。主に民間企業のトップレベルの技術者が持っている資格ですので、大学が如何に民間企業の実務能力を欲しているかが分かります。

 

確かに科学技術が社会に直接的に役立つことは重要ですし、大学が象牙の塔として社会から隔絶したものになるのは良くありません。かと言って、産業目的の応用科学分野に傾倒し、それのみに予算や人的資源が集中するのも、また問題です。

科学とは、もともと人間の好奇心から始まっています。

なぜ太陽は明るいのか?人間はなぜ風邪をひくのか?

そういった素朴な疑問を解決するために研究を進めていくのが科学であり、それで得られた知見が思わぬところで役に立つ。科学とは、本来は「〇〇に役立てよう」と言う目的で進めるだけのものではないのです。

その典型的な事例が「地質学」ではなかろうかと思います。私は学生時代、約1000万年前の火山活動でつくられた地層を研究していましたが、それが直接何かの役に立つかと言われたら、「役に立たない」と断言できます。

しかし広い視野で考えてみると、かつての日本列島でどのような火山活動があり、どのような断層運動があったのか?を知るための1つのピースにはなります。日本中の同時代の同様の地層を比較すれば、現在とどう違うのか?どこが同じなのか?が分かることでしょう。

 

f:id:geogeokun:20161010234421j:plain

 

そして地質学の場合重要なのは、「長い年月をかけて起こる事象を1度で見ることができる」と言う点です。以前もお話ししましたが、巨大地震や巨大噴火は数100年~数1000年に1度程度の頻度でしか起こらないため、バックデータが少なく、それが予測を難しくしています。しかし地下には何千万年~何億年以上もの長い時間に起こった地震や火山活動の記録が「地層」の中に刻まれて眠っているのです。一見すると役に立たないだろう1000万年前の火山の地層の研究は、見る人が見たら、現在の火山を知るための大きなヒントになり得るのです。

当時の私は「世の中の役に立つから」と言う理由では研究していませんでした。あくまで、「どのような地層があるか?」と言う好奇心で研究を進め、過去の火山の姿が徐々に見えてくると、ますます没頭するようになりました。毎日がワクワクする新発見で満ちていました。それが当時の私が研究に没頭した原動力です。

科学の原点とは、おそらくそう言ったものなのだろうと思います。大隅氏もその様なことを言いたかったのでしょう。

ちなみに私の研究結果は特に何かの役には立っていませんが、私自身の「地層の鑑識眼」のスキルが向上したことにより、現在の仕事を通じて世の中の役に立っております(と、自分では思ってますが・・笑)。

 

直接的に即効性をもって社会に役立つか?のみで科学研究を評価するようになってしまうと、基礎研究がおろそかになってしまいます。何より、研究予算が降りなかったり、次代を担う学生がその分野を学ぼうとしなくなるのが、何よりも危惧されることです。

しかし大隅氏の今回のノーベル賞受賞により、「当時は具体的に何の役に立つか分からない基礎研究でも、巡り巡って社会の役に立つものになる」と言うことが実証されました。

「そんなことやって、何の役に立つの?」なんて思わないでくださいね。

 

「好奇心が育てる科学」は人類に共通する大切な財産なのですから。

 

 

もし、なるほど!と思って頂けたら、読者ボタンを押して貰えると嬉しいです(^^)