SHIINBLOG

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仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

政府、働き方改革へ新システム導入! 良いことだけど、それが本質ではないよって話

なかなかに画期的だと思うニュースが舞い込んだ。

 

www.nikkei.com

 

政府が導入する新システムとは?

今回政府が導入した新システム「イーローズ」とは、法改正案の「どの文言がどう改正されるかを示す『改め文』が自動的に作成される」というもの。国内で効力を持つ1914の法律、2036の政令、75の勅令、10の太政官布告の正確なデータベースが入っているとのことだ。

このシステムによって、これまで若手や中堅職員が数十時間かけていた業務を大幅に軽減させると言うのだから、確かに画期的なシステムではある。今までは以下の引用文に示すように、非常に手間のかかる作業であったのが、ものの10秒程度と言うから、何とも肩の力が抜ける話だ。

 

現在の法案作成業務は、まず若手職員らが冊子の資料を参照し、コピーや切り貼りなどをして手作業で新旧対照表を作成。それを基に習熟した中堅職員が決まった書き方に従って改め文を作成していた。法律によっては「数日間徹夜して作成する」(総務省職員)という。新システムはパソコン上で瞬時に現行法の情報を収集でき、改正点を入力すれば10秒程度で改め文が作成される。

原文まま

 

でも「働き方改革」の本質はソコではない!

私がかつて労働組合の長を務めていた時も、会社に対して長時間労働の是正は生産効率アップにも繋がり、会社にとっても有利に働く」と訴えた。これについては今でも本心からそう信じているし、日本と言う国全体にとっても、それが最重要テーマだと考えている。

そして私が勤務する会社での実際の話なのだが、例えば「生産性の向上」と言うテーマで労働組合でアンケートをとるとしよう。そうすると必ず「便利なソフトを活用し、水平展開する」と言った考えが主流になってしまう。

どうも、私が勤務する会社の社員の平均的な考えでは、「生産性の向上」と言うと、「何かしらの便利なツールの活用」と言う発想になる人が多い。私自身は「本質は違うところにあるんだよ」と考えているので、同僚たちの考えには常に頭を抱えていた。

ちなみに私が勤務する会社では、平成10年頃以降から急速にIT化が進み、「ツールの利便性」はかなり上昇した。しかし社員の長時間労働は改善されなかった。

それは何故か?

シンプルに答えるなら「本質的な部分が解決されてないから」と言える。

これまでアナログで実施していた作業がデジタルになって迅速化すると、みんな何をするかと言えば「成果品の品質に凝るようになる」のだ。そうして別の問題が浮き彫りになる。それは「会社としての統一的な品質」を設定していなかったこと。そのため、社員個人が自己満足するレベルの品質を追い求めるようになったのだ。

加えて言えば、IT化とは「仕事の個人化」でもある。パソコンに向かってさえいれば、あらゆる仕事ができるようになってしまったがために、ホワイトカラーの仕事は究極なまでに個人化してしまった。もともと我が社はマネジメントが皆無な会社であったため、「IT化→個人化→自己満足」と言う労働形態に移行するのはスムーズであった。

加えてIT化により写真や図などを綺麗に作れるようになったことで、顧客側も高品質を求めるようになってしまっている。

高品質な分、値段が高くなるなら良いが、残念ながらそれはない。

 

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「働き方改革」=「生産性の向上」の本質は、 如何にして「単位時間当たりの生産量を向上させるか」にある。したがって、便利になった事による余剰時間を「高品質化」に使ってしまっては本末転倒なのだ。残念ながら、我が社はその様な方向に行ってしまった。

その理由は、

  • 会社が「成果品に最低限求める品質」を設定しておらず、社員に明確に伝えなかった。
  • もともと業務の進め方が個人単位であり、部署内の統一意識も希薄だった。
  • 長時間労働を美徳とする意識が管理職(上層部)に根付いているため、IT化により生じた余剰時間は「品質向上」に割り当てられた。ちなみに品質が向上しても、顧客から得られる売上額は変わらない。(※意味なし!)
  • 便利なツールでどんなに省力化できたとしても、工程計画が不適切であれば、長時間労働是正にはつながらない。

と、こんなところであろう。(※もっとあるだろうけど・・・)

すなわち、もともとの意識として「少ない時間で最大の成果をあげる」と言う大前提がなければ、如何に便利なツールを使おうとも、長時間労働は是正されないのである。

「求められる成果の品質と、その品質を産むための労力」を適正に評価し、また「求められる品質の成果品を完成させるまでの工程計画」が適正になされることが重要なのだ。

つまり、どんな便利なツールをつくろうが、使う側の人間が「上手に段取り」しなければ意味がない。日本の長時間労働問題の本質はそれなのだ。管理職が適正に部下を管理しないのが根源なのだから、いくらツールを便利にしても意味は無い。

 

もともとの働き方に問題があるのでは?

以上のように、いくら便利なツールができようとも、それを使う側が未熟なら意味は無い。

その様な考えでいけば、上で示した引用文の一部が非常に気になる。

 

法律によっては「数日間徹夜して作成する」(総務省職員)という。

原文まま

 

その仕事がどんなに手間がかかろうとも、「数日間徹夜する」なんていう愚かな働き方を変える方法は、非常にシンプルだ。

なにせ、その仕事が「非常に手間がかかる」ことは分かっているのだから。であれば、「着手開始から〆切までの時間を適正に設定する」のが大正解。だけども、それが「できなかった」もしくは「しようとしなかった」のが諸悪の根源なのではなかろうか?

要は、「改正法案を作成する側が、非常に手間と時間がかかる仕事と知っているにも関わらず、無茶な時間設定で仕事を振っていた」のが問題ではないのか?役人が何日も徹夜することを承知の上で、その様な日程で仕事を振っていたのであろう。

もし私が「仕事を振る側」なら、申し訳なくてそんなことは到底できない。私は自分の時間を非常に大切に思っているし、同時に他人の時間もリスペクトしている。だからこそ、自分が法改正案を作成するのであれば、役人が徹夜しなくても達成可能な余裕のある日程を考えて、法案を作成する

つまり、そういうことなのだ。

どんなに便利なツールを使おうとも、人間側の方で「他人の時間をリスペクトする」と言う意識がなければ、結局長時間労働はなくならないのだ。

おそらくだが、「イーローズ」が導入されたとしても、それで楽になった分、より締め切りギリギリまで改正法案の案件が舞い込むようになるのではないか?

また他の仕事が増えるようなことにもなるかも知れない。「楽になったから、その分早く帰ろうよ」とならないのが日本人の常である。最悪の場合、これまでになかった仕事が、ワザワザつくられる可能性だってある。

またもう1つ気になるのが、「ネットワークを使ってどこででもできる」と言う一文。自宅で待機させられ、夜中に大量の改正案が送られ、「早急に処理しろ」と言う命令がない事を祈るばかりだ(苦笑)

 

結論

新システムによって、仕事の手間が省力化されるのは非常に良いことだと思う。

ただし、仕事に関する日本人の考えの根本を見直さない限り、抜本的な解決に至らない危険性がある。

仕事は「かけた時間」ではなく、「成果」にこそ価値があると言うことを、まずは「オジサン連中」が認識すること!

ツールが便利になって、その分早く帰る若者に対し「近頃の若者は・・・もっと苦労しなければイカン!」と言うオッサンがいる限り、真の意味での「働き方改革」は進まないだろう。

また作業そのものは省力化しても、その仕事が振られる段取りが悪ければ意味が無い。

そもそも「働き方改革」と言う言葉は、労働者が主体とするものだ。しかし実際には、上述のように経営者や管理職が意識を変えない限り、労働条件は変わらない。いくらツールが便利になろうとも、仕事を采配する立場の意識が変わらなければ、労働者は働き方を変えられない。

つまり、経営・管理側が「働かせ方改革」を意識しない限り、日本は本質的には変わらないだろうと思う。

 

 

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