日本人は勤勉で良く働くと言うイメージが定着している。あなたは仕事や会社が好きだろうか?
私は自分の仕事の内容そのものは、もともとは好きではあった。いわゆる‟やりがい”を感じる時もある。でも今はどちらかと言えば嫌いになってしまった。なぜなら、まず会社が嫌いだから。何といっても「働き方」がおかしい。無理することがデフォルトになっていて、残業当たり前。全社的に残業が多く、「過労死ライン」を超えている社員も十数人いたりする。にも関わらず業績は悪くボーナスは雀の涙ほど。
業界全体がブラックな中、まだマシな方とは言えやはりヒドイ。このような状況が続けば、もともと好きだった仕事すら嫌いになってしまうのは当たり前なのではないか。長時間労働当たり前なのに業績が悪いだなんて、まるで生産性の低い日本の縮図のような会社だ。
そして、こんな気になる記事を発見。
〇目次
低成長率の原因は少子高齢化ではなく仕事嫌い?
この記事によれば、日本人は以下のように仕事嫌いで会社嫌いと言うことらしい。
就労中の18〜29歳の若者に、働く意義について尋ねたところ、「働くのは当たり前だと思う」と答えた人が全体の4割に過ぎず、「できれば働きたくない」と答えた人が全体の3割もいた(2015年 電通総研「若者×働く」調査。就労している18〜29歳の若者の回答より)。
原文まま
「愛社精神」を尋ねた調査では、「組織貢献・愛着度」という項目で、日本は28カ国のうち最下位の31%だった(ちなみにアメリカは59%、ドイツは47%である。2012年 KeneXaHigh Performance Institute「従業員エンゲージメント調査」より)。
原文まま
だがネタ元の1つである電通総研の調査結果*1を見ると、少々イメージが変わってくる。
※働くことへの考え方:【設問】あなたのお考えに近いものをすべてお知らせください。(複数回答)
(電通報より)
上の表を見ると、選択式の複数回答と言う形式で、最も回答が集中している設問(仕事はお金のためと割り切りたい)で40.4%である。その中で「働くのは当たり前だと思う」が39.1%であることに対し「4割に過ぎない」と言うのは恣意的なように感じられる。「当たり前か?当たり前でないか?」の2択で39.1%なら低いと言えるだろうが。複数回答であれば、少ないとも言えないのではないだろうか。
次に、別の設問について見てみると、上記「働くことへの考え方」に回答した18~19歳の男性22.8%、女性42.6%が非正規雇用であることが分かる。
「働く上での不満」では「給料やボーナスが低い」がダントツで50.4%(全世代共通)、次いで「有給休暇がとりづらい」が23.8%となっている。 一方で「自分のやりたい仕事ではない」は16.9%、「通勤時間が長い」は15.9%、「残業時間が長い」は14.6%と案外低い傾向にある。
※現在の雇用形態:【設問】あなたの雇用形態をお知らせください。(単一回答)
(電通報より)
※働く上での不満:【設問】あなたは、現在働く上で不満がありますか。あてはまるものをすべてお知らせください。(複数回答)
(電通報より)
上記3設問の結果を総合的に考えると、「非正規雇用が多く、給料やボーナスが低い事に対して不満だ」と言うのがまず第一にあると言えるのではないか。
本音としては「仕事はお金のためと割り切りたい(40.4%)」が、実際には給料・ボーナスは低いので、せめて自分のやりたい仕事や家に近い職場、残業が少ない仕事を選ぶ傾向にあると考えられる。
「1つの企業でずっと働いていたいと思う」が17.3%にとどまっていることから考えても、給与・やりがい・働き方いずれかについて現在の会社には満足していないと言うことなのだろう。
私の実例でもあるように、仕事内容そのものは好きでやりがいを感じていたとしても、働き方(長時間労働)に不満があったり、給料が少なかったりすれば、その会社で働き続けたいとは思わなくなり、最終的には好きだった仕事すら嫌いになる。
つまり、日本人の「仕事嫌い」は満足できる仕事に就けていないのが原因なのではないだろうか?
日本人は世界で一番仕事が嫌い
次に橘玲氏の公式サイトの「日本人は世界で一番仕事が嫌い」より。
ここでは鈴木賢志著の「日本人の価値観」から価値観調査結果のうちの2点が紹介されている。
余暇と仕事の考え方
下の表は「たとえ余暇が減っても、常に仕事を第一に考えるべきだ」の問いに対し、「強く賛成」と答えた人の割合だそうだ。
日本は2.6%と、堂々の最下位。世界で一番「仕事より余暇が大事」と言うことになり、「働き過ぎの日本」とはイメージが異なる。
ランキング上位に総じて後進国が多いのは、彼らが「働かなければ生きていけない」と同時に「働くほど豊かになれる」からではないかと、橘氏は分析している。
ランキング下位には欧米の先進諸国が並んでおり、日本は上位に1.4%も差をつける最下位になっている。そして仕事よりも余暇を優先して人生を謳歌しているイメージのイタリアでさえ、15.8%と日本人よりも「仕事第一」と考えている人が多い。
仕事はお金のためと言う考え方
次の表は「仕事は収入を得るための手段であって、それ以外のなにものでもない」という意見に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」とこたえたひとの割合。
日本は41.5%と、どちらとも言い難い状況。ただこれは上記の電通総研の調査結果と概ね一致する傾向にある。割合が少ない「仕事は金だけじゃない」国は欧米系に多い傾向にあるようだ。残念ながら、上述のイタリアはこの表には入っていないので比較できない。
日本人は本当に仕事が嫌いなのか?
以上のデータを見ると、確かに「日本人は仕事が嫌いで、金のために仕方なくやっている」と見ることができる。「日本人は勤勉で良く働く」とは逆のイメージになる。
ではなぜ日本人は仕事が嫌いなのだろう?
特に「たとえ余暇が減っても、常に仕事を第一に考えるべきだ」が2.6%と言う極端に低い数値が非常に気になった。これは世間を見ての自分の体感的に、事実とは違うように感じられるからだ。日本人は休暇をとらずに働きどおしと言うイメージはみんな持っているのではないだろうか?。
そして一般的にはプライベートを重視しているように見えるイタリア人の15.8%が「仕事第一」と言うのも非常に気になる。その辺りをもう少し見てみよう。
イタリア人の仕事事情とは
イタリア人の仕事観について検索してみたら、以下のまとめサイトがヒットした。
中でもこのサイトは数値も出ていて参考になる。
イタリアとワークライフバランス - ワークライフバランスの森
下の表のように、日本とイタリアは特殊出生率*2や老年人口が同等であり、背景となる社会条件が似たような状況のようである。そして意外にも休日も似たような日数になっている。
ただし「年次有給休暇」についてはイタリアの方が10日も多い。
合計特殊出生率 | 日 本 1.37(2009年) |
---|---|
イタリア 1.37(2007年) | |
老年人口 (65歳以上人口) |
日 本 21%(2005年) |
イタリア 20%(2005年) |
※日本とイタリアの特殊出生率と老年人口
ワークライフバランスの森:イタリアとワークライフバランスより
週休休日 | 週休日以外の休日 | 年次有給休暇 | 計 | |
---|---|---|---|---|
日本 | 104 | 15 | 18 | 137 |
イタリア | 104 | 11 | 28 | 143 |
※日本とイタリアの休日
ワークライフバランスの森:イタリアとワークライフバランスより
ちなみに上の表の年次有給休暇とはあくまで「平均付与日数」であり、実際に休めている日数ではない。
実際に休んだ日数を比較すると、イタリアは平均26.4日で世界4位。一方、日本は平均9日で世界14位と差がついている。
またイタリア人の労働周辺環境は以下のような特徴があるようだ。
- 遅刻はごく普通と言う大らかな環境に加え、残業もない。
- 自営業も多くて働く時間は自分で自由に決められる。
- 家族を大切にしていてプライベートが充実している。
- 仕事をしたら休んで当然と言う価値観が根付いている。
- その上、労働生産性では日本が20位であるのに対してイタリアは7位。
これらを読み進むうちに、日本人ってメチャクチャ損していないか?と思ってしまう。
イタリア人は働き過ぎずに、働いた分キッチリ休み、その上で労働生産性が良い。家族を大切にし人生が充実しているので、仕事に対しても前向きになれるのではないか?
日本人は勤勉な故に仕事嫌いになったのでは?
イタリアの仕事事情を見ると、日本人が特別仕事が嫌いな訳ではないのではないか?と思えてくる。
例えば「たとえ余暇が減っても、常に仕事を第一に考えるべきだ」という設問を考えた時、もともと残業が無くて十分に余暇が多く充実したプライベートを過ごしているイタリア人だからこそ、「仕事第一」と考える人が15.8%もいるのではないか?
それに対して日本人は毎日残業で疲弊し、有給休暇も自由に取得できないからこそ「土日くらい休ませてくれ。休日出勤なんて勘弁してくれ。」となるのではないか?
つまり日本人は仕事嫌いなのではなく、劣悪な労働環境により自己防衛のために仕事を嫌いにならざるを得なくなったのではないか?と思えてならない。
まとめ
日本人が仕事が嫌いな理由として、若者を中心として「非正規雇用が多いこと」と、「給与の低さに大きな不満があること」があげられる。同じ企業で働き続けたいと考える人が少ないのも、日本人の多くが、勤務する会社に満足していないことを示している。
日本の低生産性の原因が「仕事に対するモチベーションが低い」と言うことであれば、余暇の充実や給与などの待遇面等、企業側の改善努力も必要なのではないか?
またイタリア人との比較により、勤務時間(残業)の長さや余暇が少ない事で人生が充実しておらず、それゆえに仕事にも前向きになれない日本人の姿が見えてきた。イタリア人を見習って「仕事をしたら、その分休息をとる」と言うサイクルを身に着け、「休むことへの罪悪感」を持たないメンタリティを育む必要があるのではないか。
やはり今後の日本には、働きやすく人生が充実するような魅力ある社会の構築が必要なのだ。国も企業も個人も、そのための努力を重ねることが大切なのだと思う。
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