SHIINBLOG

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仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

月当たり残業100時間を超えたら普通はどうにかなっちゃいます 【前編】

電通の過労死事件を巡って様々な議論がなされています。また過労死認定された後の大学教授の「情けない」発言が、ある意味この議論が白熱するきっかけをつくったとも言えるでしょう。

同教授は多数の非難を浴びることになりましたが、当ブログでも改めてこの発言について考察してみたいと思います。なおこの発言は、実は電通社員へ向けてではなく、「過労死等防止対策白書」に対するものだと言う意見も目にしましたが、正確なところの確認は取れませんでした。したがいまして、ここではあくまで発言の内容のみを対象に考察します。

 

news.livedoor.com

 

 

発言の内容について

武蔵野大学グローバルビジネス学科教授、長谷川秀雄氏の発言を以下に引用します。

 

月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない。自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。

原文まま

 

う~ん、精神論ですか。典型的な日本の「勝ち組オジサン」の発言ですね。

 

 

月100時間超の残業を具体的に考えてみる

私も経験がありますが、月100時間超の残業は、心身ともにかなりのダメージを受けます。特に半月で100時間を超えたときは、その終盤は眉間を中心とした広範囲でピリピリと電流が走るような頭痛に悩まされながら仕事をしていました。「頭痛→10分仮眠(壁に寄り掛かるだけ)→1時間仕事すると、また頭痛→10分仮眠」と言った具合です。

何とか激務を乗り越えて自宅に帰った後は、2晩ほど不眠でした。確か振り替え休日も合せて4連休くらいでしたので、3晩目以降に眠れるようになってからは、連休をずっと寝続け、何とか回復しました。もしその時に連休でなかったら、もしかしたら鬱になってしまっていたかも?と今は思います。

 

では、月100時間労働をもう少し具体的に再現してみましょう。

まず1週間は週休2日で1日7時間労働だったとします。

月100時間と言えば、1週間5日、月20日とすれば1日5時間。定時が9:00~17:00とすれば、夕方の休憩時間を考慮して、仕事が終わるのは22:30になります。また後片付けやらですぐには帰宅できないでしょうから、帰宅は23:00過ぎ。通勤時間が1時間なら、帰宅時間は24時を超えます。帰宅後、食事や入浴、その他身の回りのことをすれば就寝は夜中の2時を超える可能性が高いと考えられます。

また翌朝は8:30会社着を目指すとすれば、7:30には家を出ることを考え、6時前には起床しなければなりません。

以上のように考えれば、睡眠時間はたったの4時間かそれ未満であり、こんな生活が長続きしないのは、誰が考えても分かるでしょう。そして、こうして蓄積された疲労はなかなか取れず、休日に丸一日寝たとしても、解消されません。少なくとも私はそうでした。

 

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自分が請け負った仕事?

「会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば残業など関係ない」

 これは一見、御立派な発言のように感じるかも知れませんが、結局は精神論ですよね。それに「完遂しようという強い意識がある」からこそ、100時間超の残業をしているのではないでしょうか?毎日5時間以上もの残業を積み重ねてるのですから、強いプロ意識がなければできません。

そして強いプロ意識があるからこそ、自分の身体の異常にも気づかずに無理を重ねて過労死してしまうんです。心臓発作や脳疾患、鬱の発症は、無理をしなければ防げたかもしれない。しかし自分の「強い意志」があるからと言って防げるものではありません。

日本人の精神論には呆れるばかりです。私は幼い頃から喘息で苦しんできましたが、わ4~5歳当時は医者ですら「精神論」でした。「母親に対する甘えが原因」と言われたらしく、病室に1人残すのは忍びなかったと、後で母親から聞きました。

中学校に入ってから良い先生に出会い、その時の話をしたら、かなり怒っていました。その後も高校の教員にも散々精神論的なことを言われ、医者からは「精神論で治るものではないので気にするな」と諭されたものです。

(※近年では意志の力で体をコントロールできる可能性について研究されているようですが、単なる精神論とは異なります。)

 

それと「自分が請け負った仕事」と言う考え方を会社に持ち込むのはどうかと思います。仕事のおおもとは「顧客へのサービスであり、外部へのアウトプット」です。あくまで社名が付与している「商品」になる訳ですから、個人で請け負うものではありません。本来は社員数人で力を合わせ、知恵を出し合って成されるものです。でなければ「会社の商品」として外には出せないのではないでしょうか?

私が勤める会社にも、そこを勘違いしている人間が多くて困ります。「自分が請け負っている」と言う意識が強くて個人的に仕事をすると、その仕事は「自己満足」に陥りがちになります。この「仕事に対する自己満足」は日本人の長時間労働の原因の1つではないかと考えています。

一見立派な考えのように聞こえるかもしれませんが、「会社の業務というより自分が請け負った仕事・・・」と言う考え方は会社員として失格だと思います。もちろん責任感を持つのは当たり前ですが、「会社の仕事」として客観視することが大切ではないでしょうか?

 

後編へ続く