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素数ゼミを題材に結果論としての進化論を説明する

先日、こんな記事を書きました。

 

geogeokun.hatenablog.com

 

何より「素数ゼミの謎」が未だにPVベスト5に入るロングセラーになるとは思ってもみなかったので、私にとっては非常に感慨深い記事になります。

 

geogeokun.hatenablog.com

 

この時は本の紹介がメインでしたので、サラッと説明して終わりましたが、今回はこの「素数ゼミ」を題材にして、進化論について書いていきたいと思います。

 

 

素数ゼミ」に進化する前提条件

素数ゼミはアメリカ大陸に生育しており、以下のような特徴があります。

 

①局所的な決まった場所で発生する。

②小さい(2~3cm:日本のセミの約半分)。

③13年と17年周期で羽化する。

 

以上の特徴は、かつてのアメリカ大陸が氷河に覆われていたことが原因だと考えられています。それ以前のアメリカのセミは日本のセミとそれほど変わらない昆虫だったと思われます。それが何故、上記の3つの特徴を持つようになったのでしょうか?

①局所的な決まった場所で発生するのはなぜ?

氷河期に北アメリカ大陸が氷河に覆われたものの、地形や気候の影響によって部分的に氷河に覆われない「特別区域」が生じました。氷河に覆われた地域のセミは残念ながら死に絶えてしまい、「特別区域」のセミだけが生き残ります。

でも生き残ったセミが、氷河がなくなった現在も特定区域だけに発生するか?の謎については後ほど解説します。

②小さいのは、なぜ?

これは言われれば「なるほど!」と思います。

氷河に覆われなかった「特別区域」は、氷河に覆われなかったとはいえ、以前に比べれば非常に寒くなりました。したがって、セミの幼虫のエサとなる「木の樹液」、寒冷化によって木が育ちにくくなり、樹液内の栄養も不足します。

つまり寒冷化によって木が蓄える栄養の量が減ったため、大きく育つことができなくなったのです。

でもなぜ、気候が温暖になった今でも、素数ゼミは小さいのでしょうか?それについても、後ほど解説します。

③13年と17年周期で羽化するのはなぜ?

これが最大の謎です。日本のセミと比べても長い期間土に潜っています。

土に潜って成虫になるまでに長い年月を要するのは、上述のように「樹液の養分が少ないから」だと思います。栄養分が少ないので成長が遅く、成虫になるまで時間がかかるのでしょう。

でもこれも、現在は環境が変わったので、早く成長しても良さそうなものです。また13年と17年と、なぜ「素数」なのでしょうか?

 

素数ゼミが小さく、長い年月をかけて成虫になる理由

人間が進化を説明する時、どうしても「寒さに適応して進化した」と言った風に、因果関係ありきで説明してしまいます。最後に紹介する「素数ゼミの謎」でも期せずして、どうしてもその様な表現になってしまっています。

しかし進化とは「結果論」なのです。セミは「小さくなろうとして小さくなったわけではない」のです。結果として小さくなっただけなのです。

ではなぜ、小さくなったのか?

それは上でも解説したように「寒冷化によって樹木の栄養が少なくなったから」です。でもセミは「エサが少ないから小さくなろう」と思ったわけではありません。

おそらく当時のセミは「沢山食べて成長が早いセミ」もいれば、「小食で成虫になるまで時間がかかるセミ」もいたのでしょう。栄養が豊富な時代には、どちらも最終的には成虫になれました。しかし寒冷化によってエサが不足したことにより、「沢山食べて成長が早いセミ」が餓死しやすくなり、生き残れなかったと考えられます。

一方、小食なセミにとっては、いつもより栄養が少なくても、もともと小食なので何とか耐えます。そして長い年月(13~17年)をかけて少しずつ成長し、身体のサイズが小さくても成虫になれるセミだけが結果的に生き残り、祖先を残すことになったと考えられます。

 

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局所的な場所で発生する理由

これはもちろん、アメリカの大部分が氷河に覆われる中、「特別区域」が残ったのが理由になります。しかしセミが「外は氷河に覆われているから、ここにとどまろう」と思ってそうしたのであれば、氷河が無くなった現在は、周囲に散らばっても良さそうなものです。

では、なぜ今も特定区域にとどまるのか?

おそらく、氷河期になった当初、「冒険好きで遠くまで遠征するセミ」もいれば「出ずっぱりで地元にとどまりたいセミ」もいたと考えられます。

冒険好きなセミは氷河の向こうへ飛んでいきましたが、そこにはセミ1匹いません。パートナーに巡り合うことなく、1人で死んでしまいます。

一方、地元にとどまったセミは、同様に地元好きな異性と出会い、子孫を残します。中には偶然、冒険好きでも地元で子孫を残せたセミもいたでしょうが、世代を重ねるごとに冒険好きのセミは子孫を残せず、地元好きのセミだけが子孫を残すようになります。

こうして、特定区域でセミが発生することになったのです。

 

13年、17年で羽化する理由

これまで説明したように、セミは氷河期によって限られた「特別区域」でしか子孫を残せなくなってしまいました。また寒冷化によって樹液の養分が少ないため、ある程度長い年月をかけて細々と成長するセミだけが成虫になります。

そして成虫になるまでの期間が12~18年のセミだけが、結果的に生き残ったと考えられます。なぜ12~18年の間なのかは、後に解説します。

氷河期になり「特別区域」でしか繁栄できなくなったセミは、場所だけでなく「成虫になるまでの期間」にも制限を受けることとなります。栄養分等の関係で12~18年で羽化するセミが多く生き残り、そのセミたちはパートナーを見つけ、子孫を残します。

始めは良かったのです。

12年のセミは、同じく12年のセミと交尾するので、子孫も12年で羽化します。そうすれば、同じ「12年の仲間同士」で集団お見合いをし、子孫を残します。

その他の年のセミも、みんな同じように子孫を残します。

 

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しかし!

36年後、12年のセミだけでなく、18年のセミの子孫も羽化します。

12年の3世代目(12×3=36)と、18年の2世代目(18×2=36)がバッティングしてしまったのです。当然、12年と18年の間にも子孫が残りますが、その子孫の羽化までの年数はバラバラになってしまいます。そうすると、同時期に成虫になる「仲間」が少なくなるため、残せる子孫がどんどん少なくなってしまいます。

12、14、15、16、18は公倍数が多いため、長い年月の中で雑種化が進み、成虫になるまでの期間がバラバラになってしまい、出会いが少なく、やがて子孫はいなくなります。

一方、13、17のセミは公倍数が少ないため、雑種が生まれにくく、同周期で羽化する仲間が減りにくかったため、子孫を残すことができました。

ちなみに、最初に残ったセミが12~18年なのは、「結果論として分かる」ことです。なぜなら、11も19も素数です。この年数で成虫になれるセミがもし多ければ、13や17と同じように、今も残っているハズなのです。それがいないと言うことは、他の要因で多数派になれなかったと言うこと。

おそらく、当時の樹液の栄養では11年では栄養が足らず、成虫になれなかったのでしょう。また19年は、セミの限界の寿命が近く、成虫になれないまま地中で死んでしまったセミが多かったのだと考えられます。

11年のセミも、19年のセミも全くいなかった訳ではないと思います。でも当時のアメリカの気候条件では、その年数で成虫になれるセミは「少数派」で、結果として子孫を残せなかったと考えられるのです。

 

まとめ

いかがでしたか?

セミは何も、好きで小さくなったり、地元好きになったり、13年、17年で羽化するようになった訳ではないのです。はじめは多種多様なセミがいましたが、氷河時代の気候と「特別区域」という環境に対して相性が良かったセミだけが「結果的に」生き残ったに過ぎないのです。

「進化」と言うと、いかにも前進して進歩したイメージがありますが、決してそんなことはありません。生物はあくまでランダムに少しずつ違った特性を持つ子孫が生まれますが、その中でもその時の環境に「たまたま合った」個体が子孫を残し、その特徴が強く残ると言うだけのことなのです。

地球の長い歴史の中で、その時その時の環境に「たまたま合った」生物の子孫として、我々人類がいます。今地球にいる生物たちは、「ラッキー」と言う意味では共通の特徴なのかも知れません。

でもそのラッキーもいつまでも続きません。我々人類は、自分の手で地球環境を変えられるまでになってしまい、もしかしたら自ら「アンラッキー」を引き寄せている最中なのかも知れません・・・。

 

 

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