SHIINBLOG

仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

ドラえもんの「苦労みそばなし」が苦労信仰を皮肉っていた事に気付いたw

 先日は日本人の苦労信仰について考察してみました。

 

geogeokun.hatenablog.com

その後、ドラえもんの秘密道具で「苦労みそ」と言うものがあったのを思い出し、動画を見てみました。

何せ、私にとってドラえもんは人生のバイブルの1つ。しかしさすがに大人になってからは、アニメもマンガも見ていませんでした。

久しぶりで懐かしいのと同時に、大人目線で見ると違った発見があって面白いです。

 

www.dailymotion.com

 

「苦労みそばなし」のあらすじ

ザックリと内容を説明すると、以下のような感じです。

ある日、楽ばかりしようとするのび太に対し、パパがお説教を始めます。

「苦労は買ってでもしろと昔の人が言った」などなど。

そして「困難から逃げるな!立ち向かえ!」と言うパパの力説に、次第に感化されるのび太

そして、やる気になったのび太は、ドラえもんが出した「苦労みそ」を舐めて、おやつを食べるための苦労を味わいます。

その後、パパが「苦労みそ」の存在を知ると、のび太に手本を見せようと、大量に舐めてしまいます。

そしてタバコを買いに行くのですが、不幸に不幸が重なり、今日中に家に帰れるか?と言う状態になる。

と言うお話。

一見すると、子供に「苦労することの大切さ」を訴えているのだろうと思ってしまいます。しかし話の内容やセリフの細部を考えると、実は作者の藤子F不二雄先生は日本人の「苦労信仰」を強烈に皮肉り、「無駄な苦労は愚かだ」と言っているように思えました。

 

作中のセリフを深読みすると面白い

各キャラクターのセリフを深読みすると、ちょっと面白い事になります。

①パパの説教内容

確かに、目の前の物事から逃げて楽ばかりしていれば、人間ろくな目に合わない事が多い。だから「逃げずに立ち向かえ」は、まぁ一理あります。

でもここで出す例え話が意味深です。

「我に七難八苦を与えたまえ」とは、戦国時代の武将、山中鹿介(やまなかしかのすけ)の名言なのですが、結局、彼の願いである「主君、尼子家の再興」は実現できず仕舞いで、無念のうちにこの世を去ってしまいます。

これって作者の皮肉なのかなぁ?と勘繰ってしまう1コマです。

②道具を出す前のドラえもんのセリフ

パパのお説教に感化され、燃えに燃えているのび太に対し

「君にしては良い心がけだけど、本当にいいの?と言うドラえもん

うん!と大きく頷くのび太に、ドラえもんは一瞬困った表情を浮かべた後に「そこまで言うなら」と道具を出します。

いつになく乗り気ではないドラえもん

のび太にどんどん苦労させたい!と思うなら喜んで出すハズです。

でも結局、苦労を乗り越えて帰ってきたのび太「偉いぞ!よく頑張った!」と抱き着いた姿に、ジーンときた私がここにいます(笑)

③苦労しておやつを食べた時ののび太のセリフ

「たかがホットケーキを食べるために、こんなに苦労するなんて」

う~ん、これは戦時中と戦後の苦しい時代を生きた世代にしてみれば、相当にカチンと来るセリフでは?と感じます。

ちなみに藤子F不二雄先生は、モロに戦中・戦後世代です。それなのに、ワザワザ同世代がカチンと来そうなセリフを入れるって、何だか裏の意味を感じてしまいます。

④「苦労したという事実が大事」と言うパパへののび太のセリフ

「う~ん、そうかなぁ?無駄な苦労ってのもあるんじゃないの?」

このセリフで私は爆笑してしまいました。

いやぁ、のび太君、案外大人じゃん!と感動w

このセリフで、「こりゃ苦労信仰への皮肉だよ!」と確信した次第です。

結局、この話は家に帰れないパパに対し、ドラえもんが「あ~あ」と言って終わります(笑)

まさに「無駄な苦労は愚かだ」と言う終わり方だと思いませんか?

 

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ドラえもんのテーマを改めて考える

ドラえもんに対する評価として、以下のような意見を聞くことがあります。

ドラえもんのび太に対して色々な便利な道具を与えて甘やかすのは、大量生産・大量消費の物質文明を想起させるものだ

確かに、見方によってはそのようにも感じられます。

しかし作者である藤子F不二雄先生にはどのような思いがあったのでしょうか?

戦中、戦後の時代を生きて様々な苦労をする中で、もしかしたら「戦争さえ無ければ、こんな苦労は無かったのではないか?」と言う思いをしたこともあったでしょう。

「無駄な苦労もある」とのび太に言わせた背景には、そんな思いがあるように感じます。

どうも、この話に関しては「苦労を賛美する同世代への警鐘」と思えてなりません。「同じ苦労を次世代に味わわせてはいけない」と言う藤子先生のメッセージが込められているように感じます。

そして、あれだけの夢のような秘密道具を考えた藤子先生であれば、人間の文明が「無駄な苦労を回避するために発達した」と考えていても不思議ではありません。

 

人間の文明は、先人と同じ苦労を次世代に味わわせないために発展した。だとすると、その完成形は未来にあり、まさに未来の世界は「無駄な苦労のない世界」としての理想の世界と言えます。

もしかしたらドラえもんとは、それを象徴するキャラクターとして生み出されたのかも知れませんね。

 

ドラえもんの世界では、とにかくのび太はダメな奴として描かれ、ドラえもんに助けられてばかりで少しも進歩しないイメージがあります。

しかし一方では「他人を思いやる心を持つ優しい少年」として描かれています(そう思えない場面もありますがw)。

もしかしたら「無理して苦労して努力するよりも、他人を思う心こそが一番大切だ」と言う裏のメッセージが、ドラえもんにはあるのでしょうか?考え過ぎですかね?(笑)

 

それにしても、ドラえもんって大人の目で見なおすと、案外と深いメッセージが込められていそうな感じがします。これからまた、ドラえもんを読み直してみようかな?と思う今日この頃です。

と言う訳で、「苦労みそ」収録巻の紹介です。

 

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