ドラえもんの「苦労みそばなし」が苦労信仰を皮肉っていた事に気付いたw
先日は日本人の苦労信仰について考察してみました。
その後、ドラえもんの秘密道具で「苦労みそ」と言うものがあったのを思い出し、動画を見てみました。
何せ、私にとってドラえもんは人生のバイブルの1つ。しかしさすがに大人になってからは、アニメもマンガも見ていませんでした。
久しぶりで懐かしいのと同時に、大人目線で見ると違った発見があって面白いです。
「苦労みそばなし」のあらすじ
ザックリと内容を説明すると、以下のような感じです。
ある日、楽ばかりしようとするのび太に対し、パパがお説教を始めます。
「苦労は買ってでもしろと昔の人が言った」などなど。
そして「困難から逃げるな!立ち向かえ!」と言うパパの力説に、次第に感化されるのび太。
そして、やる気になったのび太は、ドラえもんが出した「苦労みそ」を舐めて、おやつを食べるための苦労を味わいます。
その後、パパが「苦労みそ」の存在を知ると、のび太に手本を見せようと、大量に舐めてしまいます。
そしてタバコを買いに行くのですが、不幸に不幸が重なり、今日中に家に帰れるか?と言う状態になる。
と言うお話。
一見すると、子供に「苦労することの大切さ」を訴えているのだろうと思ってしまいます。しかし話の内容やセリフの細部を考えると、実は作者の藤子F不二雄先生は日本人の「苦労信仰」を強烈に皮肉り、「無駄な苦労は愚かだ」と言っているように思えました。
作中のセリフを深読みすると面白い
各キャラクターのセリフを深読みすると、ちょっと面白い事になります。
①パパの説教内容
確かに、目の前の物事から逃げて楽ばかりしていれば、人間ろくな目に合わない事が多い。だから「逃げずに立ち向かえ」は、まぁ一理あります。
でもここで出す例え話が意味深です。
「我に七難八苦を与えたまえ」とは、戦国時代の武将、山中鹿介(やまなかしかのすけ)の名言なのですが、結局、彼の願いである「主君、尼子家の再興」は実現できず仕舞いで、無念のうちにこの世を去ってしまいます。
これって作者の皮肉なのかなぁ?と勘繰ってしまう1コマです。
②道具を出す前のドラえもんのセリフ
パパのお説教に感化され、燃えに燃えているのび太に対し
「君にしては良い心がけだけど、本当にいいの?」と言うドラえもん。
うん!と大きく頷くのび太に、ドラえもんは一瞬困った表情を浮かべた後に「そこまで言うなら」と道具を出します。
いつになく乗り気ではないドラえもん。
のび太にどんどん苦労させたい!と思うなら喜んで出すハズです。
でも結局、苦労を乗り越えて帰ってきたのび太に「偉いぞ!よく頑張った!」と抱き着いた姿に、ジーンときた私がここにいます(笑)
③苦労しておやつを食べた時ののび太のセリフ
「たかがホットケーキを食べるために、こんなに苦労するなんて」
う~ん、これは戦時中と戦後の苦しい時代を生きた世代にしてみれば、相当にカチンと来るセリフでは?と感じます。
ちなみに藤子F不二雄先生は、モロに戦中・戦後世代です。それなのに、ワザワザ同世代がカチンと来そうなセリフを入れるって、何だか裏の意味を感じてしまいます。
④「苦労したという事実が大事」と言うパパへののび太のセリフ
「う~ん、そうかなぁ?無駄な苦労ってのもあるんじゃないの?」
このセリフで私は爆笑してしまいました。
いやぁ、のび太君、案外大人じゃん!と感動w
このセリフで、「こりゃ苦労信仰への皮肉だよ!」と確信した次第です。
結局、この話は家に帰れないパパに対し、ドラえもんが「あ~あ」と言って終わります(笑)
まさに「無駄な苦労は愚かだ」と言う終わり方だと思いませんか?
ドラえもんのテーマを改めて考える
ドラえもんに対する評価として、以下のような意見を聞くことがあります。
確かに、見方によってはそのようにも感じられます。
しかし作者である藤子F不二雄先生にはどのような思いがあったのでしょうか?
戦中、戦後の時代を生きて様々な苦労をする中で、もしかしたら「戦争さえ無ければ、こんな苦労は無かったのではないか?」と言う思いをしたこともあったでしょう。
「無駄な苦労もある」とのび太に言わせた背景には、そんな思いがあるように感じます。
どうも、この話に関しては「苦労を賛美する同世代への警鐘」と思えてなりません。「同じ苦労を次世代に味わわせてはいけない」と言う藤子先生のメッセージが込められているように感じます。
そして、あれだけの夢のような秘密道具を考えた藤子先生であれば、人間の文明が「無駄な苦労を回避するために発達した」と考えていても不思議ではありません。
人間の文明は、先人と同じ苦労を次世代に味わわせないために発展した。だとすると、その完成形は未来にあり、まさに未来の世界は「無駄な苦労のない世界」としての理想の世界と言えます。
もしかしたらドラえもんとは、それを象徴するキャラクターとして生み出されたのかも知れませんね。
ドラえもんの世界では、とにかくのび太はダメな奴として描かれ、ドラえもんに助けられてばかりで少しも進歩しないイメージがあります。
しかし一方では「他人を思いやる心を持つ優しい少年」として描かれています(そう思えない場面もありますがw)。
もしかしたら「無理して苦労して努力するよりも、他人を思う心こそが一番大切だ」と言う裏のメッセージが、ドラえもんにはあるのでしょうか?考え過ぎですかね?(笑)
それにしても、ドラえもんって大人の目で見なおすと、案外と深いメッセージが込められていそうな感じがします。これからまた、ドラえもんを読み直してみようかな?と思う今日この頃です。
と言う訳で、「苦労みそ」収録巻の紹介です。
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