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会社が「隠れブラック企業」化するメカニズムとは? ホワイト化のためには経営の根本から見直しを!!

「隠れブラック企業」なる言葉を以下の記事で知りました。「ブラック企業」が中小企業に多いのに対し、大企業では「隠れブラック企業」が多いのだとか。

では「隠れブラック企業」とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

 

www3.nhk.or.jp

 

隠れブラック企業とは?

企業のコンプライアンス法令遵守)が叫ばれる中、会社の取り組みとしては「ホワイト」であるにも関わらず、現場の実態がその思想に追いつかずにブラックなままの企業を「隠れブラック企業と呼ぶのだそうです。

例えば、過労死事件で厚労省強制捜査が行われている電通でさえ、「仕事と家庭の両立に積極的に取り組んでいる企業」であるとして厚労省から認定されていたほどです。これについては「厚労省はいったい何を見ていたのか?」と言う論調の記事が目立ちました。しかし電通の中枢部(本社)は、おそらくですが、子育て支援などのホワイトな取り組みを、実際には「本気で」試みていたのではないかと思います。その中枢部の「ホワイト化への本気」が末端へ伝わらず、「隠れブラック化」した可能性が考えられます。

私が勤務する会社もそうですが、本社は有給取得促進を各部署に義務付け、業務の効率化を図るように呼び掛けています。しかし実際問題として、現場はその思想に追いつけずに有給取得の推進は進みません。ですが本社は「有給取得促進」を呼び掛けている訳ですから、表向きには「ホワイト」に見えるでしょう。

これは、世間の好印象を目的に恣意的にホワイトを装っている訳ではなく、経営者は本気でホワイト化を望んでいても、その施策に実効性がないために生じる問題なのではないかと思います。

私がこのブログで何度も言っているように「日本の経営者・管理職のマネジメント能力不足」の深刻さが、この問題の根底にあるのではないでしょうか?

 

隠れブラック企業の実例

冒頭で紹介した記事では、隠れブラック企業の実例として「サトレストランシステムズ*1」の事例をあげています。

同社に対し過重労働撲滅特別対策班:通称「かとく」が昨年12月に強制捜査を行い、社員の勤務時間の改ざんが明るみになりました。

この会社は以下引用文にあるように、あくまで表向きは「ホワイト企業」でした。

 

この会社は、民間の就職情報サイトなどには「実働1日8時間」「完全週休2日制」をうたい、社長も書籍などで「ブラック企業はもう古い」と語るなど、労務環境改善に力を入れている姿勢をPRしていました。

原文まま

 

しかし勤務記録が実際の労働時間と合わない実態が数々発覚し、「かとく」により従業員32人の事情聴取が行われました。その結果、勤務記録の改ざんは本社からの指示ではなく、店舗ごとの現場ごとに慣例的に実施されていたとのことです。

実は、社員自らが気を利かせて「パート・アルバイトの人数が少ない時間帯をカバーするために、早めに出勤していた」そうです。また残業時間が多くならないように、店長が独断で実際の勤務時間より短く報告し、それに対して社員も「自分は社員だからしょうがない」と、実際より短い残業申請が暗黙の了解になっていたようです。

まさに本社サイドが組織を末端まで管理しきれていないと言う「マネジメント能力不足」が招いた結果です。またそれと同時に、現状に対して「しょうがない」と思考停止に陥っている従業員にも問題があります。この背景には、日本人の「長時間労働が当たり前」とする意識や、事を荒立てたくないとする「事なかれ主義」があると思います。

 

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隠れブラック企業はどのように生まれるのか?

この事例を知り、私が勤務する会社も「隠れブラック」の素養を十分に持っていると感じました。

上で紹介した「有給取得促進」は、各社員の「有給休暇取得年間5日以上」を義務付けるものですが、これに対して「うわべだけの対応」をした管理職がいたようなのです。その管理職は土曜も出勤しなければならないほど多忙だったようで、土曜出勤分は「代休」を取得しなければなりません。しかし平日に休暇を取得したとしても、「代休」を優先的に消化する決まりはなく、「有給休暇」としたのだそうです。

本社からの「有給取得促進:年間5日以上」をうわべだけ達成し、実際には土曜出勤分の「代休」は残っていると言う、まさに「隠れブラック」です。本社サイドがいくらホワイトな施策を打ち出したとしても、現場の実態が追いつかなければ、その施策は「形骸化」します。施策は具体的な実効性が伴わなければ意味がないのです。

私の上司を見てても感じますが、彼らが若手の時代は週休2日ではなかったからか、土曜出勤に対する気持ちのハードルが非常に低いと感じます。それは残業時間に対しても同様で、定時(17時)以降も普通に仕事を続け、毎日20時くらいまで働くことが常態化しています。そもそも「定時で仕事を終わらせよう。休日は休もう。」と言う意識が希薄で、「業務を効率化しよう」と言う発想もありません。

その原因は「長時間労働は当たり前」と考える意識や、「苦労信仰」等もあると思いますが、「仕事量が多い」のも大きな要因だと思います。私が所属する会社は非常に残業の多い会社ですが、それでも「赤字」です。すなわち本社がいくら「有給を取得せよ」と言っても、本社が各部署に課す「目標利益」を確保するための仕事をこなすためには、どうしても長時間労働になってしまうと言う実態もあるのです。

つまり、いくら経営者が「ホワイト労働」を訴えたところで、経営とリンクしていなければ意味はありません。社員がブラック労働をしなければ全社的に利益が生まれないような経営をしていては意味はありませんよね。

隠れブラック企業の要因は「経営者・管理職のマネジメント能力不足」「社員の意識」の2つが主なものであろうと考えられます。この2つを改善しないしない限り、いくら表面上を取り繕ったところで、実態は変わりません。

都庁の「20時以降の残業禁止宣言」も、まさに「隠れブラックを生む実効性のない施策」の代表格と言えるでしょう。

 

ブラックを正す根本策が必要

以上のように「隠れブラック」を生む原因は、経営陣の「実効性のない施策」であると言えます。

例えば、自家用車の「スピード違反」を防止することを目標とした場合、主にハード対策としての「取り締まり」や、ソフト対策としての「啓蒙活動(交通安全週間など)」を実施していますよね。

しかし仮に「公共交通機関がゼロ」で、職場となる中枢都市までの車通勤で片道2時間もかかる住宅地があるとします(※そんな場所は実際にはありえないでしょうが)。その住宅地と都市を結ぶ直線道路を通る車は、みんながスピード違反をします。なにせ、普通なら2時間もかかる道を毎日往復するのですから、少しでも移動時間を短縮したくて、みんなスピード違反をします。

そのスピード違反をなくすのに、取り締まりや啓蒙活動をしたところで、違反はなくならないですよね。だって「根本」である「公共の交通機関がなく、職場まで遠い」が解消されないのですから。

啓蒙活動は、まず効き目はゼロでしょう。どんなに「スピード違反は危険です」と表面上の綺麗ごとを言ったって、住民は「イヤ、生活が成り立たないから」と冷めた目で見るのは必然です。また「取り締まり」はある程度は効果があるかも知れませんが、そのうち警察の目をかいくぐるようになります。

やはり根本原因を考え、「公共の交通機関をつくる」か「職場の近くに引っ越ししてもらう&近くに職場をつくる」が一番効果があると考えられます。

つまり、「会社のホワイト化」もまさに同じことなのです。いわば現状の各企業は、例えば「業務を効率化して有休休暇を促進しなさい」などのような、口先だけの「啓蒙活動」に終始しているとみることができます。

それに対して末端の組織は「言ってることは分かるけど、でも目標利益を達成するには、死ぬほど仕事しないと無理だよ」と思えば、本社の啓蒙活動に乗る訳がありません。

つまり、日本からブラック労働をなくすためには、まず「ブラックな働き方をしなくても利益をあげられる会社づくり」が必要なのだと思います。社員にいくら「ノー残業デー」だと言ったところで、生活残業目当ての社員くらいにしか実効性はありません。

「会社のために」と自ら気を利かせてサービス残業をする社員のために、「残業しなくても利益を生み出す仕組み」をつくるのが経営者の仕事なのではないでしょうか?

 

 

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