学校の理科教育を考える② ~「地球科学」こそ、日本人が学ぶべきサイエンスなのだ!~
①からの続きです。
地球科学を取り巻く深刻な問題
①人員不足と言う問題
人々の生活に密着した地球科学。しかも日本の様な地震や火山が多い国にとって、非常に重要な学問であると、皆さん気づいて頂けたと思います。ですが、地球科学は今、非常に深刻な問題を抱えています。
熊本地震に関する報道が盛んだったころ、テレビに出ていた大学の先生の言葉が、この問題を切実に語っていました。
「活断層の研究者が少ないんです!」
これを聞いて、私の胸にもズーンと突き刺さりました。本当にそうなんです。活断層だけではなく、火山の研究者も少なく、地球科学分野全般が深刻な人手不足となっているのが現状です。
②地道な調査が必要なのに・・・
皆さんは素朴に疑問に思ったことはありませんか?天気予報は割と当たるのに、なんで地震や火山活動は予報できないんだろう?と・・・。
天気予報の場合、例えば「雨が降る前兆現象を知りたい」と思った時、一年間の365日のうち、雨が降る日は沢山ありますよね?しかも 気象観測が行われる ようになって100年近くが経つ訳で、沢山のデータがあるのです。それに気象衛星で雲の動きはバッチリ分かりますし、日本全国あちこちで気圧や気温が観測 されています。つまり大気の状態は地球表面で見えますし、直接触れることができるものです。人間に例えれば、顔色が悪いとか肌が乾燥しているとか、「直接 見ることができるもの」が多いのが気象の分野なのです。
まず「そうそう頻繁におこるものではない」ですよね。
規模の小さい地震や火山活動は良くありますが、大地震は滅多に起こらない。
つまり参考となるデータが圧倒的に少ないのです。
さらに調査するにしても、目に見えない地面の中を調査することになります。人間に例えれば、レントゲンやCTスキャン、エコー検査みたいなことをしたり、ボーリングを掘ったり、トレンチ調査(大きな穴を掘る調査)を実施したりします。
人間の体でさえ、あれだけ調べても隠れた病気を見つけられない場合があるのに、この広い大地の中を調べるのは、非常に地道な努力と多大な労力が必要です。それなのに人手が少ないので、思うように研究が進まないのが現状なのです。
なぜ、地球科学の研究者が少ないのか?
ズバリ、日本の産業構造と学校教育に原因があります。日本は資源が乏しいので、材料を輸入して、それを加工して輸出することで経済が成り立っています。つ まり「工業製品の製造」が重要視されてきました。そのような分野に直接貢献できる科学の分野は物理学と化学です。それと近年ではバイオテクノロジーが発達 してますので、生物学も重要視されています。
つまり、理系の人が大学に進学する時に、「物理学・化学・生物学」を選択する人が大多数を占 めるのです。地球科学は高校では「文系の人が科学の単位を取るための授業」的な扱いになってしまい、進学校になると「地球科学の先生すらいない」と言う状 態なのだそうです。これでは、大学で地球科学を専攻しようという学生が少なく、研究者になる人も少ないのが理解できます。
今こそ、日本は地球科学を大切にしよう!
私が大学生のころ、卒業研究のために山へ行って地質の調査をしていた時のことです。場所はとある観光地で、休みの日だったこともあり、観光客が大勢いまし た。その中で、ハンマー片手に歩いている奇妙な若者が歩いていれば、まぁ良く声をかけられます(笑)そして中学校1年生くらいの少年とその父親に声をかけ られたとき・・・
父親:すみません、何してるんですか?
私:大学の卒業研究で、このあたりの地質を調べてるんです。
父親:そうなんですね~。ここはどんな地質なんですか?
私:一千万年前くらいに噴火した海底火山の地質です。
親子:え~?!海底火山だったんですか!!
私は、あの時の少年のキラキラと輝いた目を、未だに覚えています。
子供のころ、特に男の子なんかは、火山とか恐竜とか宇宙とか好きですよね。それらはまさに「地球科学」なのです。教育の場があれば興味を持つ子供は沢山いると思うのです。しかし、地球科学の教育の場は、年々少なくなってしまっているとのことです。
災害大国日本。地震、火山、土砂崩れ・・・。
日本と言う国は、「地球科学」なしではありえません。
今こそ、地球科学の未来の担い手を、みんなで育てませんか?