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仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

日本の経済成長率は本当は低くない!は嘘っぽい

社会・労働問題

「日本の経済成長率は本当は低くない!」と言う記事を読みました。はじめは「それが本当なら良いことだ!」と思って読んでみましたが、内容には少々腑に落ちない部分があります。

 

blogos.com

 

日本の経済成長率が低くない根拠

日本の経済成長率が低くないのが本当なら、私たちは何故それを実感できないのでしょうか?上記の記事では「公表されている経済成長率はGDPを総人口で割った値をもとにしているため、少子高齢化が進んでいる日本を正確に表していない」と言うのが主な主張です。

つまり、働いていない高齢者の割合が増えていく中で、人口の少ない「現役世代」の生産性が年々向上していると受け取れる内容です。この論旨の拠り所は、以下に示す日銀のデータです。

 

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※日本における急速な高齢化による影響(日本銀行

 

上図の「GDP成長率」とは、「前年とのGDPの差が前年度のGDPに対してどの程度の割合を示しているか」と言うものです。例えば前年が100万円に対して今年が120万円の場合、増えた20万の前年(100万円)に対する割合は20%なので、成長率は20%になります。

上図の右の実質GDP*1上昇率は約0.9%、また実質GDPを人口で割り、その成長率が上図真ん中のグラフです。これによると0.8%ちょい。「確かに成長率低いよね~」って思いますが、ところがどっこい!左端の図を見るとかなり印象が変わってきます。

実質GDPを全人口でなく「生産年齢人口(15~64歳)」で割れば、何と約1.5%でドイツに匹敵する高水準です。

これが、上の記事の主な内容です。

 

 

数字のマジックでは?と言う疑問

上のグラフを見て、始めは「おお!」と思ったのですが、すぐ後に違和感を覚えました。と言うのも、上のグラフで使われている「生産年齢人口」が、そもそも本当に労働者人口と合うのだろうか?と言う疑問です。

上記では「15~64歳」であり、2000~2010年の平均値です。日本は少子高齢化が進んでいますから、生産年齢人口は年々減少します。と言うことは、人口が減少してもGDPをかろうじて前年と同等を維持すれば、割る人数は減ってるので「1人あたりGDP」は増えますよね?

つまり、年々生産年齢人口が減少したとしても、GDPを維持していれば「成長率が上がる」と言う結果になります。

私が思うに、上の図は「日本の生産年齢人口1人あたりのGDPが増えている」と言うよりも、生産年齢減の影響を無効化するために「長時間労働を増加させる」ことでGDPを維持していることを表しているようにしか見えません。

実際、若者の大学進学率が上昇していることを考慮すれば、ただでさえ少ない15~22歳世代は、実際には生産側には回っていないと考えられます。また定年後再雇用の方々が、本来の現役世代と同等の生産をしているかと言えば、100%そうではありません。

以上を考慮しても「中核世代が労働時間を長くすることでカバーしている」ようにしか見えません。

 

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もう少し細かいデータを見てみる

そこで、OECDからデータを引っ張って、色々と考察してみました。データは主に2011~2015年のものです。

まず、日本の労働人口。これは2011年に約6650万人で、徐々に増加して2015年には約7180万人になります。これは定年後再雇用制度が定着してきたのと、女性の労働や外国人労働者が増えたことを表していると思われます。そして、この労働人口増に伴って、名目GDPも上昇しています(OECDでは名目GDPのみ公表)。

しかし労働人口増がそのままGDP増には直結していなそうなのです。と言うのも、名目GDPの成長率と、労働者1人あたりのGDP成長率を比較すると、残念ながら後者の方が低い傾向にあるからです。

 

  • 2012年:名目GDP成長率3.87%→1人あたりGDP成長率4.45%
  • 2013年:名目GDP成長率2.29%→1人あたりGDP成長率1.95%
  • 2014年:名目GDP成長率-0.27%→1人あたりGDP成長率-0.47%
  • 2015年:名目GDP成長率1.90%→1人あたりGDP成長率1.73%

 

 また1時間当たりのGDP労働生産性)を見ると、日本は徐々に増えてますが、約38~39ドル。一方、アメリカの62ドルを筆頭に、ドイツ58~59ドル、フランス58~60ドル、オーストラリア49~52ドルとなっています。やはり日本の生産性は低いと言えます。

またOECDのデータでは、

GDP

労働人口

③1人時間当たりGDP

があるので、国ごとの1日の労働時間を試算してみました。

①÷③で国民の年間総労働時間が出るので、さらに②で割って、週5日、1ヶ月4週間として割り算してみました。

そうすると、以下の図のようになります。

 

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※国別1日の労働時間(OECDデータから算出してジオジオが作成)

 

やはりと言うべきか、フランス・ドイツは6時間ちょいと短いですね。また以外にも、イタリアは日本よりも労働時間が多いです。

しかし、これがマジックなのだと思います。みなさんも日本人の1日の労働時間が7.39時間って「体感より少ない」って思いませんか?この秘密は、以下が考えられます。

 

  • 定年後再雇用で労働人口が増えたが、実際は現役世代の労働時間が長く、再雇用世代をカバーしている場合が多い。つまり再雇用者が労働時間の平均を引き下げている分、現役世代は実際はもっと働いている可能性が高い。
  • サービス残業が多いので、データに表れない労働時間が長い。
  • したがって実際の労働生産性OECDのデータよりも、さらに低いのではないか?

 

と言えます。労働時間が8.12~9.02と長いロシア、韓国、メキシコは、実際にデータとして出ているだけ、ある意味健全なのかも知れません。

 

まとめ

以上をまとめますと、やはり「数字」は、その裏側を良く考察しないと、表す意味は180度変わってしまいます。

生産人口1人あたりの成長率が上昇していると言っても、その人口が正しいかどうかもありますし、正しいとしても「ただ長く働いてカバーしているだけ」とも考えられます。

一方、OECDのデータで見れば、やはり日本の生産性は決して高いとは言えず、また逆算した「1日の労働時間」を見ると、実際とはかけ離れている印象です。これは労働者の内訳としてフルタイムで働いていない人もいる事を表している一方で、サービス残業が表に出ていない影響もあるかと思います。

上記を総合的に考えれば「日本の経済成長率は本当は低くない!」を手放しに信じる気にはなれません

 

 

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