「サービス残業でチャンスを掴む!」と言う欺瞞に御注意を!!
こんなトンデモ記事を見つけました。
一見、素晴らしい事を言っているように見えますが、内容は薄いです。
この記事を良く読むと結局、著者自身もいわゆる「サービス残業」を100%肯定している訳ではありません。
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サービス残業は会社から見ればありがたい話だが、常態化すれば自分が苦しくなる。また、時間が30分、1時間となると、周囲も残業して当然ととらえてしまい、有り難みも薄れる。 原文まま
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彼がこの記事で言っている、チャンスを掴んだサービス残業とは、週に1~2回の10分程度のサービス残業のことらしいです。
世の中で認識されている「サービス残業」とはかけ離れていますし、著しいミスリードを生むので、こういう記事は書いて欲しくないですね。
サービス残業は法律違反です!
世の中で何故サービス残業が「悪」と見なされているかと言うと、まず第一の前提として、上の記事で言われているような「週に1~2回、10分程度」では収まっていないからなのです。
一日数時間以上の残業が積み重なり、労働者に深刻な健康被害をもたらすもので、それが公然と「当たり前のように」横行しているからこそ、社会問題化しているのです。
これだけ当たり前のように法律違反が繰り返され、それが放置されている現代日本社会は異常です。その背景には、こういった記事で「サービス残業を擁護する」人々がいて、それを支持する人間たちがいると言う残念な事実があります。
そして、これです。
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居酒屋で「日本酒の残りが少なかったんで、グラスなみなみに入れとくよ」とたまにやって顧客のハートを掴むのがプロのサービス残業というわけです。感激は、人の心を打つ。心に残る。だから客が途切れない。 原文まま
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これは、労働者が強いられているサービス残業の本質を見誤っているからこそ出てくる視点ですね。例えが適切ではありません。
「一代で会社を大きくした」と言うような経営者で長時間労働を賛美する人って根本的に勘違いしているんですよ。
経営者と労働者では、様々な前提条件が異なります。ですので「経営者の成功体験はそのまま労働者には適用できない」と考えて欲しいですね。
上の居酒屋の話は、不特定多数の顧客が存在して初めて成り立つ話です。
例えば非常に小さな「村」の居酒屋で、客は近所の数人に限られるとします。そのような状態で誰か一人にだけ「安くする」とか「一杯おまけ」のサービスを提供したとします。確かに喜ばれるでしょうが、でもそれはすぐに客中に広がり、結局、そのサービスを全員に、毎回提供する羽目になります。サービスはいつしか「当たり前」と思われ、客側の要求がエスカレートします。それでも店を成り立たせるために、最終的には、ちょっとだけお酒に水を入れて薄めてしまうとか、品質を落とす方向に行ってしまいます。
日本の「サービス残業の実態」は、まさにこれです。
いつしか企業(経営者、管理職)はサービス残業を当たり前として考えるようになり、要求はエスカレートし、労働者は疲弊します。疲弊した結果、パフォーマンスは低下して品質が低下(生産効率が下がる)します。まさに上の居酒屋と同じですよね。
労働者と経営者(使用者)の間には1対1の労働契約が成立していて、労働者にとっての顧客=経営者は、「特定少数」です。また基本的には力関係で言えば経営者の方が強く、労働者側が「イヤ」とは言えないのが現状です。
だから労働基準法があるのです!
労働基準法では労働者と使用者の関係を明確化し、労働者に所定外労働を実施させる場合、割増賃金を支払う義務があります。
居酒屋が客にサービスすることとは、根本的な前提条件が異なっており、サービス残業の場合は立派な法律違反になります。
管理職はもっとマネジメントを勉強すること!
そしてもう1つ問題なのが週に1~2回、10分程度のサービス残業を実施する派遣社員の「キリの良いところまで終わらせます」発言に「責任感がある」と思ってしまう管理職が存在することです。
上の記事でも「週1~2回、10分程度と言うのがミソ」と書いているように、「この派遣さん、上手いね~」と言う事なのでしょうが、私なら逆に考えます。
私は管理職として、この派遣社員には
「その10分、どうにかできなかったの?」と聞きます。
この事例の会社は9時~17時の7時間が所定内労働時間のようです。つまり、この派遣さんは「10分/7時間=42分のうちの1分」を短縮できなかったと言う事ですから、タイムマネジメント能力に問題があるのではないか?と、私なら考えます。
良く「キリが良いところまで」と言って、定時過ぎても仕事を続ける人がいますが、私は良くないと思っています。
何故なら「仕事は可能な限り細分化し、その1つ1つの分量を把握しながら仕事する方が、効率的だし最終的に良いものができる」と思うからです。仕事を細分化して分量を把握しておけば、だいたい定時終了10分前には「キリが良い」状態になります。その空いた時間で、今日終わらせた仕事を整理し、明日やるべきことをササッと手書きで箇条書きにして頭の中を整理しておきます。
ちなみに、以上のようなことを実行するためには仕事を客観視することが不可欠で、それは経営の視点で考えても非常に重要です。もちろん、毎回上手くいくとは限りませんが、日々意識することが大切だと思います。
「サービス残業でアピール」は安易な方向の努力と認識すべし
上の記事では、この派遣社員のサービス残業に関して「先行投資」などと大層な言葉を挙げていますが、私には努力も工夫もない安易な行動に映ります。
まさに、以前紹介した「見せかけの勤勉」そのものではありませんか。その様な視点で考えると、以下の様な見方もできます。
この派遣さん、責任感を演出するために定時内の10分は手を抜いてるのでは?と
少なくとも管理職の立場にいるなら、そのくらいの穿った見方も出来るようにならなければと思います。
だいたいビジネスの世界だって「安易な安売りは逆効果」ですよね?良い商品を安く売るには、裏に「カラクリ」があり、そのカラクリを知恵を絞って捻り出すのがビジネスマンの醍醐味です。
そして、その様な知恵を出せるように己を鍛える事こそが、先行投資ではないでしょうか?定時内に求められる以上の成果を出す努力をする方が、よっぽど生産性があって建設的な考え方だと思いませんか?
自分の時間を安易に安売りした派遣さんは、目先の「正社員の座」は勝ち取れましたが、長い目で見たら決して成功しないでしょう。だって、その程度に騙される人が管理職をやってるような会社なのですから。
最後に・・
以上、色々と批判的に書いてしまいましたが、私が一番言いたいのは「こういう安易な成功談みたいなものを信じて、真似してサービス残業をしないで欲しい」と言う事です。自分が何故成功できたのかを自己分析できていない人は、良くこういうピント外れな事を言うので、くれぐれも騙されないように気を付けて欲しいと思います。
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