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仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

数字のマジックに惑わされないための3つのポイント 「がんで死ぬ人は減り続けている」をヒントに考えてみる

科学 世の中

先日、九重親方(元千代の富士)がすい臓がんで亡くなりました。心より御冥福をお祈り申し上げます。

改めて「がん」の恐ろしさを感じるとともに、医学の進歩を切実に願います。世界レベルで見ても、「分子標的治療薬」の登場で、がん治療は進歩を遂げています。

では、日本ではどうなのでしょう?

様々なメディアでは「日本において、がんで亡くなる人は増え続けている」と報じられており、日本のがん医療は進歩していないかのように感じられます。

しかし、どうも一概には言えないらしい。かなり興味深い記事を読みました。

bylines.news.yahoo.co.jp

 

がんで亡くなる人は減り続けている

がんで亡くなる人は実際には増えています。国が公開している「人口動態統計」のデータによれば、1990年には年間約21万人であったがんによる死亡者数は、2014年には約36万人にまで増えています。

でも、この記事では「高齢者の影響」に着目しています。

がんは「一種の老化現象」と言われているとおり、年齢を重ねることで、がんにかかるリスクは高まります。

つまり、高齢者ほど、がんで亡くなる人の割合が高いため、「高齢者人口が増加すれば、がんで亡くなる人口が増加するのは必然では?」と言うことです。

その点に着目して、年齢構成による影響を除外したデータで見てみると、実は日本のがんによる死亡者は減り続けており、主要先進7か国の中でも少ないのだそうです。

ただし、ここで数字のマジックを疑ってみましょう。

と言うのも、世の中では人々の印象を望まれる方向に導くために、数字のマジックを使っている場合が案外とあるのです。

主な手法は「絶対数」と「割合」の使い分けです

例えば「高齢者を除けば日本のがんによる死亡者数は減っている」の根拠となるグラフの「死亡者人口」が絶対数だとすれば、「その世代の人口そのものが年々減ってるだけなのでは?」と疑うことになります。

しかし、ご安心ください。今回提示されているデータは「10万人あたり」の割合で示されていましたので、確かに「減っている」と言えそうです。

 

この様に「数字の背景にあるもの」を考慮して検討しなおすと、別の見え方に気づくことは多々あります。

また逆に考えると、特にビジネスの世界では消費者を誘導するために、数字のマジックを巧みに使っている事例も少なくありません。

 

数字のマジックに注意して見てみよう

他の事例で考えてみましょう。

以前、厚生労働省の「転倒災害防止」についての資料を見たときに、数字のマジックがありそうだな・・・と思った記憶があったので、再度確認してみました。

ちなみに最初にお断りしておきますが、これはあくまで「数字の裏に潜むマジックを疑ってみる」ためのトレーニングであり、決して「このデータは嘘だ!」と言っている訳ではありません

 

〇業種別の転倒災害

下のグラフを見ると、確かに小売業、社会福祉施設、飲食店の割合が高いですね。

でも、色々と疑った見方をすれば、また違った発見があるかも知れません。さぁ、一緒に考えてみましょう。 

 

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厚生労働省HPより

 

考察1:他の労働災害は?

上の業種別のグラフで見れば、そもそも労働災害の種類が違うのでは?と言う疑問が湧きあがります。

例えば製造業では、工場のライン生産での立ち仕事がメインであれば、そもそも転倒災害は発生しにくく、「機械の操作ミス」や「機械の誤作動」による災害の方が、発生するポテンシャルとしては大きいのではないかと思います。

また 建設業も機械に関係する災害や、資材の落下による災害等、転倒よりも他の労働災害が発生する可能性が非常に高いのではないか?と考えられます。

小売業や飲食店は、その労働の形態から考えて「発生し得る災害の種類が少ない」と予想されます。そう考えれば転倒災害の割合が高くなるのは必然ではないか?と考えられますよね。 

考察2:労働災害の総発生件数は? 

これはかなりのキーポイントになります。

そもそも、各産業の労働災害の総発生件数はどの程度なのか?を考えてみましょう。 

一般的なイメージでも、建設業は危険が多そうですし、小売業は少ないだろうと考えますよね。

例えば、労働災害発生件数が 建設業で1000件、小売業で100件だとします。

そうすると、転倒災害の発生件数は建設業で90件、小売業で34件となり、「建設業は転倒災害が少ない」と一概に言えないことが分かりますよね。

考察3:就労者の年齢構成は? 

業種別の就労者の年齢構成によっても変わってくる可能性があります。一般的に考えて、どうしても高齢者の方が 「転びやすい」でしょうし、「転んだ場合に怪我しやすい」ですよね。

特に個人経営の飲食店は、現役で働いているお年寄りの方々が多そうですし、そうであれば転倒災害の割合が多くなるのは必然かと思います。

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数字のマジックに惑わされない3つのポイント

以上のように、同じグラフでも見方を変えて行くと、受けるイメージは変わります。

現在ではインターネット上で沢山の情報が溢れており、様々な数字のマジックが使われていると思います。

買い物はもちろん、どの政治家を支持するか?など考える時に数字のマジックに惑わされない方が、より良い生活を送れそうです。

では「数字のマジックに惑わされないポイント」について解説していきます。

① 割合で表されている場合は「絶対数」を考える

 上記の業種別のように、異なるものを割合で比較している場合は、その「絶対数」を考えてみましょう。

対数が多ければ多少の数値の変動では割合は変わりませんが、絶対数が小さければ多少の変動で割合は大きく変わります。

② 絶対数で表されている場合は「割合」を考える

 今度は逆に、絶対数で比較されている場合は「割合ではどうなのだろう?」と考えてみましょう。

対数が小さくても、その背後にある母集団の数が小さければ、割合は高くなります。

逆に絶対数が大きくても、母集団が大きければ割合としては小さくなります。

例えば「各都市の交通事故件数」を比較したとして、同じ100件でも交通量の多い都市と少ない都市では、その数値の持つ意味は大きく変わります。

③「母集団や背景となる環境に偏りがないか」を考える 

「がんで亡くなる人の割合」の例のように、母集団の中に偏りがある場合、それを除外することで真実が見えて来る場合があります。

また様々な背景の複合により、一概にその数値のみで判断できない場合もあります。

例えば大学進学率を考えてみましょう。

1990年度では「40%弱」だったのに対し、2014年度では「60%弱」になっています。(大学進学率をグラフ化してみる(2015年)(最新) - ガベージニュース

実に20%も上昇している訳ですが、これにはカラクリがあります。

1990年と言えば、ちょうど団塊ジュニア世代」が大学に進学する年でした。 つまり絶対人数が多かったのです。1990年の18歳人口が約200万人に対し、2014年の18歳人口は約120万人(総務省統計局HPより)。

それに対して大学の数はどうかと言うと、1990年の507に対し、2014年は781(統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103)。

つまり、この数値の単純な比較で考えれば、「1990年に比べて2014年の方が大学に入りやすくなっている」と言えますよね。

このように、背景にある条件が異なっている場合、単純に比較はできなくなります。

 

まとめ

いかがでしたか?

現代日本では様々なデータに溢れていますが、同じ数字でも、視点を変えるだけで大きく意味合いが変わる場合があると、お分かり頂けたでしょうか?

情報に溢れている現代社会だからこそ、数字のマジックに惑わされないよう、十分注意していきたいものです。 

 

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