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がんの免疫療法が新たな発展期を迎えている! 最先端の治療法は知っておいた方が良い

私が子供の頃は不治の病の代表格だった「がん」。現在では治療法がかなり発達してきています。がんは難しい病気ですので、もちろん完治までの治療法は確立されていません。ですので世界中のあちこちで様々な研究が行われており、大部分の医師はその最先端に追いつけていないのが現状です。医師だって人間です。世界中の最先端を瞬時に「自分のもの」にはできません。

したがってどうしても、がん治療は医師間・病院間・地方間で格差が生じてしまいます。我々一般人は、その無知ゆえに医療の格差を知らず、最先端の治療を受けられずに命を落としてしまう可能性があるのです。

 

〇目次

 

がんの治療方法

がんの治療方法としては、手術による患部の切除抗がん剤治療放射線治療が主流でした。また温熱療法や免疫療法も以前から存在し、実施している病院もありましたが、治療法の主流になるほどの効果は認められなかったようです。

ところが最近では、その「免疫療法」が発展してきており、世界ではかなりの効果を認めている事例があるようです。

 

がんの発症と免疫の関係

もともと「がん」とは、免疫不全によって発症すると言っても過言ではありません。

私たち「多細胞生物」は絶えず体中のあちこちで細胞分裂し、古い細胞から新しい細胞に置き換わっています。その様な「日常」の中で、細胞分裂時に「エラー」が生じ、通常の細胞とは違う細胞が生まれることがあります。その細胞は、例えば本来は「胃壁を構成する細胞」になるはずだったのが、エラーによって本来の役割を果たさないばかりか、勝手な行動をしながら自らの複製をつくっていきます。

もとは人間の細胞でありながら、エラーによって勝手な行動をするようになり、まるで「人間というシステム」から独立した別個の生命体のように活動します。これが「がん」が「悪性新生物」と言われる所以です。

この細胞分裂時のエラー」 は実は人間の体内では日常茶飯事らしいのですが、「免疫力」によって、生まれたがん細胞を片っ端から殺しているのです。つまり「がん」は何らかの原因で免疫が正常に働かなくなることで発症すると言えます。

そこで、免疫力を強化してやれば、自然に「がん」を殺すようになるのではないか?と言う発想で取り組まれてきたのが「がんの免疫療法」なのです。

 

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がん免疫療法の3つのアプローチ

免疫療法は考え方としては理に適っており、これまでも試行錯誤されていたようですが、やっと最近5年間で目覚ましい進歩を遂げているらしいのです!

最近5年間では、患者さんの免疫細胞をの力を強め、「免疫細胞が腫瘍を探し出して破壊する作用」が高まり、生存率が数か月から数年に伸びると言う好成績をあげています。

ちなみに免疫療法には大きく分けて「3つの柱」があるようです。以下にそれぞれについて紹介します。

 

①免疫チェックポイント阻害剤

免疫反応というものは、活発になりすぎると普通の細胞まで攻撃し、人間を自滅させるような働きもあるようです(※実際にその様な病気もあります)。それを防ぐために、数種類ある免疫細胞のうちの「T細胞」は複数の「チェックポイント」をパスしないとフルパワーを出せないようにブレーキがかかっているとのことです。

そして、がん細胞がそれを巧みに利用し、T細胞に攻撃されないように身を守っています。具体的には、T細胞は細胞表面のタンパク質を目印にして「攻撃して良いか悪いか?」を判断しており、がん細胞がT細胞に攻撃されないための特殊なタンパク質を表面に持っているとのこと。

がん細胞は、近づいてきたT細胞にその特殊なタンパク質を渡すことで攻撃から免れます。そこで「人工的につくった抗体」がブロックすることで、がん細胞が「特殊なタンパク質」をT細胞に渡すことを防ぎます。

それによってT細胞にがん細胞を攻撃させるように仕向けるのです。

 

②樹状細胞ワクチン

樹状細胞は体内をパトロールして、攻撃すべき細胞を免疫細胞に知らせる働きをしています(※超ザックリ解説です)。 その時の目印が「抗原」と呼ばれるタンパク質です。

樹状細胞ワクチンとは、がん患者から「がん細胞」と「未成熟の樹状細胞」を取り出し、実験室で「がん細胞だけに見られる抗原」を見つけて樹状細胞にその抗原を与えて再び体内に戻します。

そうすると、樹状細胞が「この抗原を持つ細胞を破壊せよ!」と、免疫細胞に命令をし始め、免疫細胞ががん細胞を攻撃するようになります。これが「樹状細胞ワクチン」です。

 

③キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)

キメラ抗原受容体発現T細胞(以下CAR-T細胞)とは、ザックリ言うと、人工的に改造した「T細胞」のことらしいです。患者から取り出したT細胞を無害なウィルスと感染させて「改変」させると、がん細胞の目印の抗原の受容体ができて、パワーアップします。それを患者さんの体内に戻し、がん細胞を攻撃させると言うものです。

ウィルスに感染させると言うのが、素人的には少し怖い気もします。しかし、この治療法を試験した進行性白血病患者の、なんと90%で「がんが一掃された」らしいです!

 

免疫療法の第4の柱?「がん光治療」

以上のように目覚ましい発展を遂げるがん免疫療法。上で紹介した3つのアプローチ以外でも、新たな手法が研究されているようです。その1つが「がん光治療」です。

 

mainichi.jp

 

がん細胞への攻撃にブレーキをかける「制御性T細胞」は上述したように、がん細胞を攻撃しない目印となるタンパク質(抗体)を持っています。これに特定の波長の近赤外線を照射することにより、化学変化をさせて体内に戻します。その後は体外から同じ波長の近赤外線をあてるだけで、がんが消えるそうです。

その理由は、「近赤外線によって制御性T細胞が減少してリンパ球のブレーキがはずれて、がんを攻撃できるようになる」からだと言うことです。

まだマウスによる実験段階ですが、3年以内の人間への臨床試験を目指しているようです。転移したがんにも効果があるとのことで、非常に期待されます。

 

まとめ

がん免疫療法とは、人間が本来持っている免疫力を利用した治療法ですので、抗がん剤治療よりも副作用が少ないと言われます。ただし副作用がゼロではなく、免疫が過剰になり、健康な細胞まで攻撃することもあるようです。

抗がん剤も、最近では「狙ったがん細胞だけ破壊する」と言う機能を持つものも開発されていますので、がんの種類や患者の状況に応じて色々と使い分けられることになるのでしょう。

がんの治療は近年、目覚ましい進歩を遂げていますが、一方で、全ての医者が進歩に追いつけている訳ではないのも事実です。

私も親や親せきをがんで亡くしていますが、やはり「当事者」になってしまうと、精神的に追い詰められて余裕がなくなってしまいます。そうなると最新の治療法を自分なりに調べる事もできなくなり、「医者だけが頼り」と言う状態になってしまいます。

しかし全ての医者が最新の治療方法に精通している訳ではなく、特に地方では最新の治療は望めません。ですので、自分や家族が健康なうちに、なるべく「がんの最新治療」に興味を持っておくことをお勧めします。

どんな治療方法があって、どの病院へ行けば良いのか?を知っておけば、いざと言う時に絶対役に立つと思います。

 

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