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「働き方改革」を注意深く監視しよう!-後編- 労働者目線で「改革」に期待すること

日本経済新聞社が実施した「社長100人アンケート」。政府が推進する「働き方改革」に期待していると言う結果が出ている。その中でも社長らが期待しているのが「裁量労働制の拡大」「脱時間給導入」といった施策の推進だ。その危険性について、前編で述べさせて頂いている。

今回の記事ではその他の項目について考察を進めてみたい。

 

geogeokun.hatenablog.com

 

社長100人アンケートの結果

さて、ここでもう1度アンケート結果のグラフを見てみよう。

 

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日本経済新聞2016年9月29日*1より

 

前回あげた2点以外で最も多いのは「テレワーク・在宅勤務の促進」、次いで「解雇の金銭解決の導入」、「外国人労働者受け入れの促進」、「高齢者雇用の促進」と続く。

また10%を切る小さい割合で「残業時間の上限設定」、「同一労働同一賃金の実現」がある。

このうち、「外国人労働者受け入れの促進」や「高齢者雇用の促進」については特に問題はないと思う。少子高齢化により労働力低下が懸念される日本において、若者の雇用を不当に奪わない程度であれば、外国人や高齢者の積極雇用は良い効果を生みそうだ。

またテレワーク*2や在宅勤務の促進についても、多様な働き方を創出することになるため、歓迎できる施策だと思う。

問題があるとすれば、「解雇の金銭解決の導入」と 「残業時間の上限設定」および「同一労働同一賃金の実現」の割合が低いことであろう。

 

「解雇の金銭解決の導入」について

これについては以下の記事で詳しい解説がなされている。

 

www.j-cast.com

 

現状では、解雇について当人が不服の場合、裁判で争われることになる。その結果、解雇が「有効」と判断されればそのまま解雇となり、「無効」と判断されれば復職することになる。しかし一度「解雇」の通告を受けた当人が、再びもとのように働くことができるかは疑問だ。その場合、金銭によって和解すると言う方法も有効であるように感じる。

しかし連合(日本労働組合総連合会)は以下のように述べている。

 

  A:確かに、職場復帰を希望せずにお金をもらいたいという労働者もいます。しかし、そのような希望があった場合、現在でも裁判上の和解によって金銭的な解決を行うことも可能ですし、2006年から制度化されている労働審判においても同様の解決をはかることが可能となっています。このような状況にある以上、金銭的な解決を望む労働者が存在しているということを理由に、新たな制度を導入する必要はありません。それよりも、このような制度を導入した場合、「金さえ払えば自由に解雇できる」といった風潮が広まってしまうデメリットの方がはるかに大きいのです。――

原文まま

 

確かに、それも一理あるとは思う。ただ現状では労働者に金銭的な恩恵があるのは、裁判の結果が労働者に有利に働いたときのみである。また裁判に至ることなく、会社からの一方的な解雇に泣き寝入りしている労働者も少なくない。

そのような現状を考慮すれば、解雇の金銭解決は必ずしも労働者に不利に働かないのではないか?と思えてくる。特に以下の2点について適正な対応がなされれば、逆に雇用の流動性が高まることが期待されるのではないか。

  • 労働者の不利益にならない「金額」の設定
  • 転職が容易な社会の構築

少子高齢化で人手不足の状況に加え、雇用の流動性が高まれば、労働市場は労働者に有利に働くと考えられる。ブラック企業からは人材が流出し、より優良な企業に人が集まるだろう。ブラック企業は淘汰され、倒産するか「ホワイト化」するかを余儀なくされると予想される。

 

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社長が「消極的」な項目について

上述のようにアンケート結果では「残業時間の上限設定」および同一労働同一賃金の実現」に対しては、社長らが消極的であることが分かる。これは非常に危険な傾向だと考えざるを得ない。

この傾向から、社長らは「人件費を不当に抑えた上で労働力を確保したい」と考えているように受け取れる。これについては「まだ分からないのか」と言いたい。ワタミがブラック労働問題で経営不振に陥る一方で、改善を続けるユニクロが好調を維持している。また塚田農場は「アルバイトと就活を両立させるシステム」により好評を博している*3

やはり労働者には「気持ちよく働いてもらう」方が、長い目で見れば企業にとってもプラスに作用するし、日本全体の生産性向上につながるのではないか?

特に今後、外国人労働者を積極的に登用したいのであれば、人材を大切にする文化を育むことで、より優秀な人材が世界中から集まるメリットが期待できるのではないか。

ドイツやイタリア等は労働者が無理な働き方をせずとも、日本よりも労働生産性が高いことが知られている。外国でできることが日本でできないと言う理由はないはずだ。

 

まとめ

前編から通して考えるにつけ、どうにも日本の経営者は「マネジメント能力に乏しい」と考えざるを得ない。人件費を安く抑えることだけに注力しているように見え、一方で「人材の有効活用による生産性の向上 」に対するアイデアに乏しいと感じる。

以上を考慮すると、私が希望する「働き方改革」の骨子は以下のとおりである。

 

  • 裁量労働制の拡大や脱時間給の導入は実施しない
  • 解雇の金銭解決を導入し、同時に外国人や高齢者の雇用を促進して「雇用の流動性」を高める(解雇しやすくても転職しやすい社会に)
  • テレワークや在宅勤務等、多様な働き方を推進する
  • 残業時間の上限を設定し、同一労働同一賃金を実現する
  • ドイツやイタリア等の、日本より労働生産性が高い国の企業の経営手法を積極的に取り入れる
  • 労働基準監督署の組織力強化、権限拡大を推進し、機能不全を解消する

 

以上の施策の推進によって、みんなが無理せず生きていける日本になることを期待したい。

 

 

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