定年後再雇用を考える
定年後再雇用にあたり、定年前と同じ業務内容で賃金が低いことに関して、裁判により「違法」と判決が下されました。
定年後再雇用については、そもそも年金受給開始年齢が引き上げられた事とも無関係ではありません。
企業にとっては、国が年金払えなくなった代わりに、その尻拭いをさせられていると感じている場合も少なくないのではないでしょうか?
とは言え、企業としても
・人手不足
・若手への技術の伝承
など、メリットもあるはずです。
と言うか、法的に決められてしまった以上、イヤイヤ実行するよりも、企業として「メリットになるような制度設計をする」のが良い経営ではないかと思います。
実際、定年後再雇用制度が言われるようになった時、その一番の理由として「技術の伝承」があげられていました。当時は団塊の世代の定年問題も議論されていて、人口の多い団塊の世代がゴッソリ抜けてしまう事も懸念されていたようですが・・・。
私としては、それには懐疑的でした。だって、定年までに技術を伝承するチャンスはいくらでもあったハズでしょう?それなのに「伝承できなかった」人(企業)が、5年延ばしたところでできないでしょう?と。
そして、今回ニュースになった運送業者に至っては、どうも
「再雇用してやってるんだから、給料安くてもいいんだろう?」と思ってるように感じてしまいますね・・・。
記事でも「同一労働同一賃金」と言っていますが
まさに、その通りだと思います。
会社側は労働者に対し、その労働によって得られる利益に対して相応の報酬を支払うのですから、同じ仕事(量・質)に従事させているのなら、同じ報酬を支払うのは当然です。これは、法律とか世間体とか関係なく、経営者が人を雇う場合に考えるべき、当然のことと思います。
だってそうですよね?
人を雇って仕事してもらうのに、「ま、こんなもんで良いだろう」と、いいかげんに給料決めますか?
全うな経営者であれば、その人が生み出すであろう利益(生み出すと期待する利益)を勘案して給料を設定するハズです。その人が生み出す以上の給料を払ってしまっては赤字ですし、その逆であれば、会社を辞めてしまうかも知れません。経営を成り立たせるためにも、適正な給与設定は重要事項です。
しかし残念ながら、日本の企業には、その考えが甘いと感じる場合が多いです。おそらく「終身雇用制度」が慣例的で、雇用の流動性が低いのも一因かと思います。
今回のように、トラックドライバーという、どちらかというと「ブルーカラー」に属する職種で、同一労働同一賃金がなされていないのは、どう考えても企業側の考えが甘いとしか言いようがありません。
例えば、
・就労時間を短くする
・若手のサポート的な役割に限定する
等のように、定年前とは違う勤務形態にして、負担を軽減する代わりに
賃金を低く抑えるのであれば理解できます。
定年後再雇用制度は、少子高齢化の日本にとって、労働力を確保する上でも重要な制度ですが、逆に、若者の活躍の場を奪うようになってしまっては本末転倒です。
そもそも、年齢を重ねれば、体力や集中力は衰え、若い時と同じようなパフォーマンスは望めません。しかしその代わりに、熟練者ならではの知識と経験が生かされます。
定年後再雇用制度は、熟練者の知識と経験を生かすかたちで、「新たな形で会社に貢献してもらう」ために、新たな役割を設定し、それに見合った給与設定をすれば、このようなトラブルは抑えられると思います。
国が定めたルールを逆に生かす形で、企業側は発想の転換をして、よりよい雇用を生み出して頂きたいものです。