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月当たり残業100時間を超えたら普通はどうにかなっちゃいます 【後編】

長谷川教授の発言についての考察の、前回からの続きです。

 

news.livedoor.com

 

発言内容を再掲しておきます。

 

月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない。自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。

原文まま

 

なぜ起業家が引き合いに出されるのか

「残業時間など関係ない。自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。」

確かにそういう事実はあるかも知れませんが、会社員と起業家では前提条件が違いすぎます。このような考え方は、某居酒屋チェーンの創業者が「企業当初の自分の頑張り」を社員に強いるのと同じ思想です。

起業家は基本的に「自分がやりたい仕事」をしています。誰に命令されるわけでもなく、自分で仕事をつくり、自分でペース配分して仕事をしています。もちろん顧客とのやりとりで辛い思いをすることもあるでしょうが、少なくとも「社内」では自分個人の発想がそのまま実現します。

将来成功することを信じ、「ここまで頑張れば乗り切ることができる」と言う目標設定があるからこそ、頑張れます。そして仕事の成果はそのまま自分に返ってきます。これが非常に大きい。

しかし会社員の場合は違います。上司に恵まれなければ、いつまでにどのような完成形が必要なのかも知らされず、ひたすら「先の見えない」仕事をさせられる場合があります。この「先が見えない」のは精神に大きな負担がかかります。

また頑張って仕上げた成果が上司にダメだしされれば、さらに精神的ダメージになります。加えて上司の力量に難がある場合、本来は素晴らしい成果であるにも関わらず、不当な評価を受ける場合もあります。これもキツイ。

そして会社員の場合、どんなに頑張っても成果は大きな報酬にはつながりません。せいぜい残業代。しかしサービス残業をさせられれば、その残業代すらもらえません。

起業家を引き合いに出す時点で、会社員の事を分かっていないと言えます。

 

人的資源獲得の努力は一社員の責務ではない

「更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。」

これも間違い。もちろん文句ばかり言っても始まらないので、上司に人員の確保を訴えると言う手段もあります。事実、私もそうしたことがあります(過去記事参照)。

ただし、それは本来は「管理職の仕事」であり、一般社員がいちいち配慮するものではありません。

それにしても本当に日本人って、管理職の仕事を理解できていない人が多いと感じます。部下に良い成果を出させるために、指導を続けるとともに環境を整備するのが管理職の仕事です。管理職の能力に難があれば、社員自らそのように働きかけることはあるとしても、それをスタンダードにしてはならないのです。その様な組織を容認してしまうから、日本の労働生産性は低いのではないでしょうか?

 

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日本は転職しにくい国なのですが・・

「それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。」

この発言そのものは正しいと思います。

しかし日本は非常に転職しにくい国です。特に私のように40歳を超えると、途端に転職先が限られます。もちろん高度なスキルや資格を持っていればまだ良いかも知れませんが、それでも転職市場に活気がある訳ではありません。

会社がダメなら、自分が倒れる前に転職しろ!は正しいですが、大学教授なら、それを会社員に言う前に、もっと世の中に訴えて現状を変える努力をして欲しいものです。

 

自分への投資をするためには?

「また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。」

これも、もっともな意見ではあります。

しかし前回の記事で書いたように、月100時間超の残業をしていたら、自己投資する時間はどこにあるのでしょうか?あんな生活を何か月も続ければ、自己投資する前に身体が壊れます。

適正な余暇があってこそ、様々な観点から自分に投資できます。趣味や子育て、家族や友人との付き合いだって様々な気づきを与えてくれ、思わぬ発想を得られたりして仕事に結びつく可能性があります。その様な事も含めて自己投資だと思いますが、睡眠時間も確保できないようでは、そこに時間を捻出するのは非常に困難です。 

 

まとめ

長谷川教授の発言について1つ1つ考察してみましたが、どうしても「強者の論理」にしか感じられません。これまでは発言権のある成功者(=強者)が様々なメディアを通じて自分の成功体験を一般人に勧めたことが、日本人の長時間労働の原因の1つではなかろうかと感じます。今回の件もその延長線上にあるのでしょう。

しかし時代は変わりました。

現代ではブログやSNSなど、インターネットを活用して一般人でも自分の考えを発信できるようになり、同じ「労働者目線」で仕事に対する多様な価値観を知ることができるようになってきました。

むしろムチャクチャな働き方が否定されるようになってきていることに関しては、非常に嬉しく感じます。長谷川教授の発言についても、大学が謝罪することになりましたしね。

このままの流れで、日本人の働き方が改善される方向に進んでくれることを願います。

 

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