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管理職が部下に「積極性」や「自主性」を求めることは責任転嫁だ!と思う件について

このブログではかねてから、管理職には「部下へ仕事の指示を出し、適正に時間管理をしながら指導・改善していく義務」があることを再三述べています。

しかしながら、実際には下の記事で書いているように「放任されている」のが現状です。放任することで労働者側にも甘えが生じ、組織全体の生産性は低下します。

だからこそ、管理職は部下を管理しなければなりませんが、何故、彼らは部下を管理しないのでしょうか?

geogeokun.hatenablog.com

 

なぜ管理職は部下を管理しないのか?

私がこれまで、会社で何人もの管理職を見て来て感じるのは以下の通りです。

①そもそも部下を管理すると言う発想が無い。

②どうやって管理したら良いか分からない。

③時間管理は「不可能」だと思っている。

④自分がプレイヤーでい続けることを当然と思っている。プレイヤーで仕事をしていると、部下の管理をする余裕はない。

⑤部下の「自主性」や「積極性」が何よりも重要だと思い込んでいる。

 ①~③はどうしようもないとして、④については以前、記事にさせて頂きました。

 

geogeokun.hatenablog.com

今回は⑤の「部下の『自主性』や『積極性』が何よりも重要だと思い込んでいる」について書いていこうと思います。

 

部下の「自主性」や「積極性」は必要か?

私の考えでは「半々」ですね。

例えば・・・

 

 この本の以下の記述を読んでみて下さい。

しかし、サラリーマンでも起業に向いている人は、上司の言われたとおりにやる一方で、自分なりに考えて新たな提案をします。

たとえば、「こんな報告書をつくって」と上司に言われたら、指示どおりに報告書をつくると同時に、「こんな資料も用意してみました。よろしければ目を通してみて下さい」と、言われた仕事をこなすだけでなく、自分なりの工夫をプラスする。

ダメな上司であれば「余計なことはするな」と叱責されてしまうかもしれませんが、たいていの上司であれば「気が利くじゃないか」と喜んでくれるはずです。     原文まま(p.18より)

この本は大概は「なるほど」と思えるのですが、上記の引用部分は賛成しかねます。

なぜなら、「自分なりの工夫」というものは「その仕事の本質」「会社組織の機能性」を理解していなければ、「単なる有難迷惑」になりかねないからです。

もちろん仕事の本質や組織を理解した上での「工夫」であれば、非常に有用ですし、その提案をしてきた部下は非常に有能であると評価できます。

でも世の中そうそう上手くいくものではなく、時間ばかり費やしてピント外れのものをつくってしまう場合も多々あります。

実際、今まで私が面倒を見た後輩社員で、そういうことは良くありました。

若い社員であればなおさら、ヘタに「自分なりの工夫」を加えて徒労に終わるよりも、上司の指示に忠実に従いながら、その指示の背景にあるものを十分に理解する努力が重要です

また私の会社の「Aさんの負担軽減のためにBさんに仕事をシェアしたのに、Bさんが必要以上に仕事を早くこなし、かえってAさんに負担が生じた」と言う事例を紹介したことがあります。 

geogeokun.hatenablog.com

このように「良かれと思ってやったことが、返って不都合を起こす」ことは往々にしてあることですので、私は基本的に部下には「積極性」は求めません

上記引用文で言えば「余計なことはするな」と言うダメ上司になっちゃいますね(笑)

 

積極性の功罪を野球で考えてみる

私は野球観戦が好きで、良くプロ野球の試合を見ます。

そうすると解説者が「今のは積極的なプレーでしたね」と言う時もあれば、「今のは暴走です。今後気を付けて頂きたいですね」と言ったりします。

これは野球の様々な局面で言われることで、走塁や守備、打撃の様々な場面で見られ、決して結果オーライでは論じていません。例えば

「今の盗塁は結果的には成功しましたが、5点差で負けている終盤で、しかも打者が4番バッターでツーアウトという場面を考えたら、あまり良いプレーとは言えませんね」

つまり、試合が終盤で点差もあるので「一気に大量得点を狙いたい場面で、ツーアウトで4番なら、走者がチョコマカするより、4番に任せて打撃に集中させるべき」と言うことですね。

また

「今の盗塁は結果的にはアウトになってしまいましたが、投手の注意力が散漫になっていた隙をついたと言う意味では、素晴らしい積極走塁だったと思います」

特に、ピッチャーが立ち上がりで制球に苦しんでいるときなどは、足でかく乱させるのは非常に有効です。序盤であれば例えアウトになったとしても相手を揺さぶることができます。

つまり、そのプレーが「積極的」と評されるか「無謀」と評されるかは、その局面を十分に理解し、何が最善かを判断できているか否か?で分かれます。

プロ野球の世界では特に、重要な場面ほど「若手プレイヤー」には「細かいところまで」サインを出し、「ベテランプレイヤー」には「大まかな方向性だけ示し、あとは任せる」というサインを出すことが多いと思います。

私も下に積極性を求めるとすれば、それは「そろそろ管理職に昇進させたい部下」であり、若手には基本的には求めません

 

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部下に「積極性」「自主性」を求めることは「責任転嫁」だと思う

ある時、とある人が新入社員について「言われた事しかしないんだよなぁ」と評していて、私としては大きな違和感を 感じたのを覚えています。

だって新入社員ですからね。

仕事の全体像を理解できていなければ、言われた事しかできないのは当然です。

逆に指示した事以外の仕事もやって欲しいのであれば、「部下に任せられる範囲内の仕事の全体像を示し、その中で自己判断できる裁量を与えればよい」のです。

「言われたことしかやらない」と愚痴る前に、「言われた事以上をできる環境」をつくってあげるのが、管理職の務めではないかと思います。

 

もしも私が新入社員に積極性を求めるとすれば、それは「先輩社員の動向を逐一観察しているか?」と言う点についてだけですね。

例えば、私が新入社員を連れて外回りをしたときに、「私とお客様との話を漫然と聞き流している」ようではダメですよね。私がそこに新入社員を連れて行く目的が何かを考え、他人事ではなく当事者意識を持って臨むことができるか?と言う点を重要視します。

メモでもとりながら、ただ黙ってしっかりと聞いてくれれば良いのです。逆に、私とお客様の会話に割って入って、余計なことを話すのは「積極的」ではなく「無謀」と捉えます。

 

また身近な問題管理職が、またまた以下のようなトンデモ発言をしていました。

「いくら仕事が少ないからといって、『何かありますか?』の一言もなく帰るアルバイトさんを、これ以上庇うつもりにはなれない」

アルバイトと言う立場の人にすら「積極性」を求める愚かさ。この上司は本当にどうしようもないな~と改めて軽蔑した瞬間です。

アルバイトさんが「積極性」を持たない原因が何かと言うと、もう1人の問題管理職が常に「刹那的で独善的な指示を出す」からです。

つまり仕事の全体像も示さず、常にその場しのぎで指示を出し、時には時間外であっても平気で「今日はこれ終わらないと帰れないからね!」なんてキツク言ったりするからなのです。

彼らにしてみたら「下手に余計なこと言って帰れなくなってしまったらタマラン」が本音でしょう。

そもそもアルバイトと言う立場であれば、「指示された仕事をこなし、定時で帰る」のは当然です。

それ以上の仕事させたいのなら、「社員として雇えよ」と言いたいですし、百歩譲ったとしても「自分から指示を出す」のが管理職の責任です。

まさに自分の責任を、一番弱い立場のアルバイトさんに押し付けると言う、非常に卑劣な言動ですよね。

まぁ、もっと言えばこの上司、 本性は「非常に気が小さい」のです。部署の業績が悪ければ、アルバイトさんとの契約を解消すると言う決断も迫られます。その時に「自分がクビにした」と言う罪悪感から逃れるために、あえてアルバイトさんを悪者に仕立てることで、「自分は悪くない」と言う逃げをつくっているに過ぎないのです。実に情けない。

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最後に

ある意味では部下に「積極性・自主性」を求める事も重要です。

しかし、世の中の大半の管理職は「部下を管理して適切に指導し、育てる」という自らの義務を怠り、自らの責任を部下に転嫁するための逃げ口上として「積極性・自主性が足りない」と言っているのです。

前回の記事でお話しした「部下を放任する管理職」とは、こういうメカニズムで生まれているのだと、私は思います。

もし身近な管理職がしきりに「積極性」を強調するようであれば、その管理職はいざとなったら「お前は積極性が足りないから失敗したんだ」と責任を部下に押し付けるダメ上司の可能性があると警戒しておいた方が良いと思います。

 

ちなみに上記のアルバイトさんへは、私が彼らの仕事の全体像が分かる資料をつくり、また仕事の流れが分かるように、部署内の回覧物を彼らにも回すように改善しました。

その説明をすると、彼らは「先を予測しながら仕事が出来るので、非常に有難い」と喜んで下さいました。

やはり、これまでは「先が見えない暗闇の中で手探りで仕事をする」と言う感覚だったようです。つまり、何も情報が無いので積極的に動きようがないのが実態でした。

その様な状況で、彼らがアルバイトと言う立場であれば、なおさら 「言われた仕事だけこなすのが自分の役割だ」と思ってしまうのは当然かと思います。

管理職が部下に積極性を求めるのであれば、積極的な行動を促す環境をつくらなければなりません。その工夫を怠り「積極性が足りない」と愚痴るだけなのであれば、それは責任転嫁以外の何物でもありません。

 

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