SHIINBLOG

仕事とか科学とか

労働問題や面白い科学の話題について書き綴ります

ブラックバイト問題を考える:日本社会に潜むブラック・スパイラルを断ち切ろう!

こんなニュースが入ってきました。

news.careerconnection.jp

牛丼チェーン店のブラック労働は既に社会問題化し、運営会社では第三者委員会を設置して改善に取り組んでいるハズ。それでもまた、このような問題が発覚すると言う事は、日本のブラック労働問題が如何に根深いか?を示しています。

日本のブラック労働問題には、日本民族が持つ独特の価値観が「ブラックなメンタリティー」を生み出すもとになっていると私は考えています。それについては、また別の機会で書かせて頂くことにして、今回は「ブラック・スパイラル」について書いていこうと思います。

 

デフレスパイラル的な構造要因がブラックを生む?

ブラック労働というものは、何も今の日本で始まったものではありません。ヨーロッパで発祥した共産主義は、過重労働を強いられる労働者階級の人々が、ブルジョア(資産家階級)からの搾取に対抗するために生み出されたもの。

また日本の労働基準法も、本来の目的は、過重労働から労働者の人権や健康を守ることにあります。

おそらく資本主義は、自然状態のまま放置して行けば、格差は拡大するばかりで資産家階級が労働者階級から搾取する方向に進むのであろうと考えられます。それを法律やモラルで必死に抑えている(ように見せかけてる?)のが現代社会です。

とは言え企業だって日々、生存競争にさらされている訳で、業績を伸ばす或いは維持するために、必要に迫られれば「安い労働力」を欲するようになり、ブラック化します。

現在の日本社会のブラック要因の1つはまさにこれで、バブル崩壊以来の長く続く不況がブラック労働を生み出す原因の1つとなっていると言えるでしょう。

デフレスパイラルという言葉は、みなさん聞いたことがあると思います。

物価の下落→企業収益の圧迫→企業の経費節約→需要不足→更なる物価の下落→更なる企業収益の圧迫→設備投資の抑制→リストラなどによる雇用の減少(失業の増加)→家計の所得の減少(購買力の低下)→消費の減少→物価の下落

デフレーション - Wikipediaより

と言う風に、デフレがさらなるデフレを生み出し、悪循環することを言います。日本がここまでの状況に陥ってるかどうかについては、識者によって見解は違っているようです。しかし実際問題として「物価が安くなる⇒給料が安くなる⇒安いものを求める⇒安価なサービスを生み出す」と言う流れは確かにありますよね。

外食チェーン店と言っても色々ありますが、居酒屋やファミレスにしても、どちらかと言えば一般市民をターゲットにして「安くて便利なサービス」を提供することに特化しています。一流シェフが手間暇かけて高級料理を振る舞うのとは、ある意味対極にあると考えて良いでしょう。

これらの外食チェーン産業のビジネスモデルの特徴は「安くて便利なサービスを提供するために、あらゆるマネジメントを徹底していること」であると私は考えています。

例えば、店舗展開(どこに店を出せば良いか?等)や店舗運営システム、一括大量購入による材料費の低減、調理の省力化、作業の徹底したマニュアル化等々、あらゆるマネジメントはやり尽くされているのではないでしょうか?その様な背景の中、さらなる競争力維持のために、もはや「安い労働力の確保」だけが残されている状況だとすれば、非常に危険な状況にあると感じます。

f:id:geogeokun:20160716142250j:plain

 

便利さのデフレスパイラルがブラック労働を生み出す

あくまで私の個人的見解ですが、現代社会を考えるにつれ「便利さが安売りされていないか?」と言う危惧があります。

セブンイレブンが24時間営業を開始した時(1970年代なので案外古い)は、さぞ画期的だったことでしょう。便利な分、多少高くても客は入ったと思います。ファミリーレストランなどの外食産業もコンビニ的な便利さを売りにするようになり、24時間営業をする店も増えました。非常に便利で画期的な事でしたが、人間の欲望は果てしないもので、いつしかその便利は当たり前になります。あちこちで便利な店が乱立すると、便利の価値は下がります。まさに便利のデフレーションですね。そうなるともはや、便利さだけで客は得られないので「安くて便利」にシフトしてしまいます。日本が不景気なのも相まって、便利であっても安くなければ売れなくなりました。「安くて便利」が当たり前になると、「安くて便利で美味しい」を売り出しますが、これもすぐに価値が薄くなり、「便利で美味しくてさらに安い」と言った風に、まさに便利さのデフレスパイラルが起こっていると考えられます。

そしてこの便利さが安易に手に入ると言う風潮は、あらゆる分野にも浸透し始めています。例えば国土交通省の「ワンデーレスポンス」もその例でしょう。国土交通省公共事業を民間会社に発注していますが、国交省職員から民間企業担当者への問い合わせを「その日のうちに答えなさい」と言うものです。「その日の汚れその日のうちに」ではありませんが、確かに、国交省担当者からしてみれば、その日に生じた疑問点やトラブルをその日のうちに解決できれば、さぞかし便利な事でしょう。しかし公共事業は高度な技術レベルを要します。簡単な問い合わせがたまにあるくらいなら何事もないでしょうが、ヘビーな問い合わせが日に何回もあり、それを「その日のうちに対応」していたら身体がいくつあっても足りません。相手にだって都合はあります。もしかしたら企業側の担当者がインフルエンザで倒れているかも知れません。他の社員も国交省の別の仕事の「ワンデーレスポンス」の対応に追われ、休んだ社員をカバーできない可能性だってあります。

まさに、今の日本では欲しいものがすぐ手に入るのが当たり前になり、それが高じてあらゆる業界がスピードを求められるようになり、その対応に追われる社員の労働はどんどんブラック化していきます

しかも上で紹介した「ワンデーレスポンス」という愚かなキーワードを盾にして、国までが率先して「便利の安売り」を企業に強いている状況になっています。

f:id:geogeokun:20160716140546j:plain

 

そして「ブラック・スパイラル」が生み出された

ちなみにブラック・スパイラルは勝手に私が思いついた言葉ですが、一応検索してみたら、ブラック企業スパイラル」を訴えている人はいました。

一度ブラック企業に入ってしまうと、せっかく辞めても、中途採用を募集する会社もブラックで、結局は何回転職してもブラック企業に入ってしまうというループの事。

労働環境の問題 ブラック企業スパイラルより

私がここで提言するブラック・スパイラルとは 「ブラック労働がさらなるブラック労働を助長する」と言うスパイラルのことです。

私も業界がブラックなので、これまで散々、ブラックな労働をしてきました。夜中まで仕事して疲れていれば、当然、自炊する気力なんてありません。コンビニや24時間営業の外食店をありがたがり、利用してきました。もちろん「より安くて美味しいもの」を選んできました。ブラックな労働をしていても、夜中も営業している安くて便利な店があれば、何とか生活はしていけます。つまり、ある程度のブラックに耐えられる環境が整えられてしまっているのです。当然、サービスが良くて安い店を選ぶので、店側も安くて高品質を追求し、そのしわ寄せは従業員のブラック労働を生み出します。

ブラック労働によって疲弊すれば、全般的に購買意欲は低下しますので、高くて良いものや、お金(体力・気力も)を浪費する娯楽への消費行動も低下します。それは回りまわって自分が所属する会社の収益悪化にもつながり、さらに自分の労働もブラック化します。ブラックが恒常化することで、人々の意識も荒みだし、ブラック化に同調します。この記事の冒頭で紹介した牛丼チェーン店の社員も、まさにこれによってブラック化してしまったのではないでしょうか?

そしてこのようなブラック労働は、社員ばかりでなく、とうとう学生アルバイトにまで及んでしまっています。日本の将来を担う人々を、若いうちから疲弊させてしまってどうするのでしょうか?

便利さを追求するあまり、逆に自分の首を絞めてしまっては本末転倒ですよね?そう言えば以前にも、こんな記事を書いていました。よろしければご覧ください↓

geogeokun.hatenablog.com

謙虚な気持ちでブラック・スパイラルを断ち切ろう!

f:id:geogeokun:20160716142333j:plain

ここまで書いてきて「自分も反省せねば」と言う気持ちに駆られています。いつしか便利な世の中に慣れきってしまっていました。どんなに技術が発展しても、その背後で働いている人間がいるのであれば、そこにブラック労働が生み出されてしまうのです

そしてブラックは連鎖して、自分に返ってきます

思えば、少子高齢化で晩婚化が進むのも、便利さのデフレブラック・スパイラルの副産物かも知れません。私もこれまで独身の一人暮らしでブラック労働を続けてきたわけですが、便利な世の中のお蔭で何とか普通に生活できています。ブラック労働の影響で出会いが無いだけでなく、自ら出会いを求める気力も体力もありませんでした。しかも便利な世の中のおかげで、疲れて気力の無い独身でも、普通に生活できてしまいます。つまり、疲れて無気力でも一人で生きていける中で、いつしか人との繋がりに対しての意識が希薄になってしまったのかも知れません。

いくら安くて良いものがすぐに手に入る便利な世の中になろうとも、愛する家族がいない生活は楽しくありません(※現在の私の心境であり、一般論ではありません)

人間はやはり「足ることを知る」のは大切ですね。常に自然や社会、他人に対して謙虚な気持ちになり、足ることを知り、人間としての本当の幸せとは何なのか?もう一度考えてみる必要があると、つくづく思います。

 

ブラック労働を助長する負の連鎖は、そろそろこの辺で断ち切らねばなりません

 

 

もし、なるほど!と思って頂けたら、読者ボタンを押して貰えると嬉しいです(^^)